コミュニケーション ソルフェージュ 思考と心

未熟な演奏をどう聴くかは耳の使い方次第

音程やリズムの正確さにとらわれて表現されている本質が見えなくなることがあるのは自分を投影しているから、ということを前回書きました。

もうひとつ音程リズムの表面的な要素に気を取られて音楽そのものが聴けなくなる原因があるのです。

それは音程リズム以外の音楽を構成する要素が何なのかを知らないこと。

音色とか音量とかそんなことは分かりやすいので特に教育を受けていなくても無意識でも自然と耳が向くでしょう。

それ以外にフレーズの運びや全体の構成や勢いや描こうとしているイメージやその他にも音楽は聴き手によっていくらでも深みが感じられるものなのですね。

なんのこっちゃ?という気がしたらこう考えてみるとどうでしょう。

音楽といえばテレビから流れるものだけしか触れる機会はないし、さほど興味も無いという人の場合、「お!いいな!」と思うのは懐かしい唱歌や過去のヒット歌謡ということは結構多いです。

これ、いい音楽かどうかの判断基準が「知ってる曲かどうか」だけだからなんですね。

もちろん音楽に詳しくなくても知らない曲でも新しいジャンルでも楽しめる耳の開けた人もいます。

でもそうじゃない人も当然います。

良い悪いではありませんが、耳の使い方が人によって違うということなんですね。

もうひとつ、学生の頃に吹奏楽に打ち込んでそれ以降ほかのジャンルには触れてこなかった人の場合。

吹奏楽の定期演奏会でやった「ディスコキット」や「宝島」はすごく興味を持って聴いても新作委嘱作品なんかには全然興味が無い、なんてこともありますね。

これも「知ってる曲だから好き」という判断基準を持ってるひとつの例です。

音程やリズムしか聴けないのもこれと同じ事なのですね。

せっかく日々の忙しい中で生演奏を聴く時間とお金を投資するのなら一回の演奏からできるだけたくさんのものを聴いてこれからの自分の演奏の肥やしにしたいですよね。

たとえ聴いていて何か引っかかるトラブルがあったとしても、それ以外にどんなことが聴こえて自分の耳を広げてくれるだろう?なんて思いながら触れてみると、同じ演奏からでも見えるものは全く変わってくるものです。

ひとつのことにとらわれて自分で世界を狭くするのはもったいないことですね。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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