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なぜ状況で演奏は不自由になるのか

同じ動きのはずなのに、場面や相手によって身体の軽さや吹きやすさが変わる。

それは単なる気分ではなく、無意識の思考が身体の準備の仕方を変えているためです。

今回は、状況によって変化する快適さの仕組みを整理しながら、演奏時に自分の状態を観察し、コントロールする方法をまとめてみます。

快適さが変わる理由

同じ動きで違いが出る理由

道を歩いていて正面から来る人が「目上の人だ」と思った瞬間に、ちょっとした身体の詰まりを感じませんか?

これはもしかしたら無意識で固まった姿勢をしておくことが礼儀だと思ってるのかもしれないし、危害を加えてくる危険人物だからと警戒しているのかもしれません。

反対に正面から来る人が「安心できる仲間だ」と思ったら、挨拶する声も柔らかく伸びやかになりますよね。

これは意識の問題ではありますが、同時に身体のコントロールの問題でもあります。

人の身体には、「どう動くか」を考える脳からの指令が大きく影響します。

人の身体には、『どう動くか』を考える脳からの指令が大きく影響します。

何かしようと思ったら、まだ言葉として認識していない無意識のうちから身体はその準備をはじめます。

つまり相手にどう接するかを考えている時点で、その後の動きを引き起こす準備を身体がすでに行なっているのです。

「礼儀正しく振る舞うべき相手だ」と思った時点で、自分の中の礼儀正しい動きのスイッチがオンになってしまいます。

逆に身構えなくていい気楽な相手だと思ったときには、実際に近くで対峙する前に身体はそういうモードになっています。

礼儀正しいモードと気楽モードそれぞれで「こんにちは」という同じ言葉を発してみたら、どんな違いがあるでしょうか。

当然ながら声や気持ちには違いがあるでしょう。

楽器を演奏するときも同じです。

同じ動作でも、どんなモードでそれを行うのかで結果は変わってきます。

演奏でも日常でも「今の自分は何モードで動いているのかな?」と観察すると、一つ一つの動きを意図的に選ぶ習慣に繋がって行きますよ!

 

目上の人と話すときのストレス

目上の人に対する時と家族や親しい友人に対する時の違い、これは普段の練習と本番の違いにも似ているかもしれません。

このなんとなく落ち着かないちょっとした緊張感や違和感って一体どこから来るのでしょう。

「下らないこと話しちゃダメ」

「結論がはっきりしてなければ!」

「相手が関心のある話題を選ばないと」

そんな風に思っていたら、確かに不自由でしょう。

反対に、何でも率直に話せるお友達や家族にはそんな風には感じないし、窮屈に感じながら話をしたりはしないでしょう。

もしかしたら目上の人と話している時に、

「失礼があってはいけない」

「くだけた接し方をしてはダメ」

など自分に禁止していることがあるのが、違和感や疲労感の原因ではないでしょうか。

本番のときに「ミスしちゃいけない」などの禁止事項や、「練習通りでなきゃダメ」というような義務感があると、身体が窮屈で音質も固くなるのと同じことかもしれません。

試しに目上の人と話すときに「何を言っても良い」「どんな話題でも良い」と思ってみたら、どんな気持ちにまたはどんな会話になるでしょう。

今まで問題なく社会生活を送ってきたあなたなら、「何を言っても良い」と思ったとしても、とんでもない失礼なやらかしに直結するってことは無いでしょう。

意外に話が弾んで自分自身も楽しめるかもしれません。

まだ常識がない学生や新卒時代に身につけたコミュニケーション、これは幼くて体力がないときに身につけた奏法と同じで、今はもう見直す必要があるのかもしれませんね。

 

快適さをコントロールする

「このメンバーだと吹きやすい」の原因

いつもの仕掛けが吹きにくい。

このオケに来ると必ずミスする。

このメンバーでやるといつも快適で調子が良いし吹きやすい。

そんな現場によって快適度の違いってあるものです。

他には同じオケにいるはずなのに、soloとtuttiのときではなぜか居心地が変わったり。

大好きな旋律で得意なフレーズと、難しくはないけど何か苦手な部分の吹きやすさの違いがあったり。

そんなこともあるでしょう。

もしかしたらこれは同じことが原因になっているかもしれません。

楽器や奏法や環境は同じで、吹きやすく快適な時は確かにある。

それなのに同じ条件下で吹きにくい瞬間もあるというのは、外的な要因でその変化が起こっているわけではないでしょう。

たとえば電車の乗り換えで階段を上り下りするときに試してみましょう。

一つ目は「この階段キライだな、本当は登りたくなんかないのに」と自分に言いながら。

二つ目は「この階段大好きなんだ!昨日から楽しみにしてたんだよね!」と自分に言いながら。

どんなことが感じられるでしょうか。

きっと何かしら違ったでしょう。

これは好きとか嫌いと思ったから快適さが変化したのではなく、そのときに身体の動き方や使い方が違っていたから起こった変化です。

それも偶然ではなく、あなたが自分で引き起こした意図的な変化です。

身体の使い方は意図で変わるし、無意識だとしても考えてることに影響を受けます。

快適だと思う時とそうでない時では、外的な要因によって思考が違った影響を受けているので、身体の快適さにも変化が生まれるのです。

楽器や奏法やメンバーが同じでも、自分がどんなことを考えて何を意図するかによって、パフォーマンスだけでなく自分の居心地や快適さも変わっていくというのが興味深いでしょう。

同じような現場で意図を変えて、どんな風に身体に影響が出るか試してみるのも面白いかもしれませんね!

 

動きをスムーズにしたいなら

同じフレーズでも、吹いているときにそれを『好きだ』と思う時と『嫌いだ』と思う時には動きやすさに違いが出てきます。

吹く動作でなくても、階段の上り下りや荷物を上げ下ろし、それにただ歩くことなどでもその違いは実感できるでしょう。

人の動作は考えてることから引き起こされるので、喜んでやりたいと思っている時には快適に動くことができます。

反対にやりたくないと思っている時には、動きに葛藤が起きるのは自然なことでしょう。

でもこれ、具体的には身体の何が違って動きの質が変わるのでしょうか?

答えから言ってしまうと、身体の一番軸の部分がどうなってるかということに影響されてるのです。

身体の一番の軸というのは、頭蓋骨と首の骨が接する部分。

AO関節とかAOジョイント、環椎後頭関節などと呼ばれます。

その関節に関わる筋肉である後頭下筋群が力んでいるかどうかで、末端の手足や胴体の表層の筋肉の使い心地が違ってきます。

アレクサンダーテクニークのレッスンを受けたことがある方はよくわかるでしょう。

もちろん全身の協調作用が動きの質には影響していますが、協調作用の大元はAO関節です。

「イヤだな、やりたくない」と感じる時には、無意識のうちに頭と首を力ませて固めてしまいがち。

反対に「好きだな、楽しい!」と思ってるときには、頭と首に力みは生まれにくいので全身が動きやすい状態になりやすいのが身体の仕組みです。

また、「首を縮めよう」と思っていなくても、思考に矛盾や葛藤があると、身体はその矛盾や葛藤を含めた動きをします。

身体は意図に逆らって変なことをしているわけではなく、きちんと意図通りに動いてくれているのですね。

「何か快適じゃないな」

「もう少しスムーズに動きたい」

そんなときは身体の状態に注意してみたいものですが、主に頭と首を繋ぐ関節がどうなっているかを気にしてみると動きの質をコントロールできますよ。

 

一緒に演奏したい人になるには

「この人と演奏すると快適」

「あのメンバーだと吹きやすい」

という一緒にやる相手によっての演奏しやすさってあるものですが、どうせなら共演者からはやりやすい相手だと思われたい。

そんな時に心掛けられることって何かあるのでしょうか。

吹きやすさや居心地の良さは、自分の身体をどう取り扱ってるかに影響されます。

そして基本的に誰かがどう感じて何を思うかを、外からコントロールするのは不可能です。

誰かに良く思われようとか好きにさせようというのは、現実的に他人がどうこうできることではありません。

とはいっても。

好かれやすい人と取っ付きにくい人というのは現実的にあります。

その違いって何なのでしょうか。

一つは目の前の相手にとって「身を守らなきゃ」と感じさせないこと。

身体が固まって動きが悪くなる原因は、大きく分けて3つあります。

・身体の構造ついて勘違いがあるとき

・出来ないことをしようとしてるなど思考面の混乱があるとき

・危険な目に遭ったとき

アレクサンダーテクニークでは、身体のことや思考のことはよく取り上げられます。

それは自分でコントロール可能なことだから。

そして危険な目に遭ったときに固まってしまうのは、安全を守るため大切な反応なのでやめる必要はないのです。

「危険な目に遭った」と感じるのは、交通事故など身体的なことだけではありません。

嫌な上司が側に来た時や遅刻の言い訳が嘘だとバレた時など、メンタル面で危険だと感じた時も身体は固まって身を守ろうとしてしまいます。

・いつもダメ出しばかりする

・機嫌が悪くて八つ当たりされる

・無茶な要求を押し付けてくる

そんな人と一緒にいたら無意識に「身を守らなきゃ」と感じるのは自然なこと。

それとは反対に

・ミスに寛容で安心できる

・よく褒めてくれる

・お互いを尊重しあえる

そんな人が側にいたら安全な感じがするものですよね。

危険がなくて安全だと感じたら、身体は固くなることはなくある程度のリラックスをしていて動きやすい状態になりがち。

演奏するのに都合が良い状態に近くなります。

ということはやたらとダメ出ししてイライラしている人よりは、ある程度の寛容さがあって自己肯定感を上げてくれるような人の方が、一緒に吹きやすいということになるでしょう。

相手がどう思うかは相手の自由。

それでもどんな風に受け取られたいと思って振る舞うかは、あなたが自分の意思で変えることのできる部分です。

共演者に対してやたらとダメ出しするのか?

良いところ見つけて伝えるように心がけるのか?

その違いでアンサンブルのしやすさが変わってくるかもしれませんよ。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得した他、「音楽」カテゴリー、「クラシック音楽」カテゴリーでもベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCEおよびATI(Alexander Technique International/国際アレクサンダーテクニーク協会)認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。聴く耳育成®︎協会代表理事。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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