「ゆっくり練習をしているのに上手くなった気がしない」という方は練習の取り組み方がまちがっているのかもしれません。
せっかく上手くなりたくて頑張っているのなら
・雑でもとにかく最後まで曲を吹き通す
・何度も繰り返しているのにいつまでも出来るようにならない
・ゆっくり練習するのは簡単すぎて退屈に感じてしまう
そんな結果に繋がらない練習はやめましょう!
無駄な練習をやめて本当に上手くなりたい方のために、今回は楽器練習の仕方についてまとめてみました。
もくじ
上手くなる練習と上手くならない練習
実は練習には2種類あり、上手くなる練習とならない練習というものが存在します。
冒頭で挙げた
「雑でもとにかく最後まで曲を吹き通す」
「何度も繰り返しているのにいつまでも出来るようにならない」
「ゆっくり練習するのは簡単すぎて退屈に感じてしまう」
というのは上手くならない練習です。
厳しいようですが、これらをどんなに長時間かけてたくさんこなしても上手くはなれません。
上手くなれない練習というのが存在するという事実を知らない多くのアマチュア奏者は、いつまで経ってもステップアップできないその無駄な練習をいつまでも続けることで時間を、そして人生を浪費してしまうのです。
でもこの記事で、多くのプロ奏者にとって当たり前の本当に上手くなる練習手順を知ったら、もう二度と無駄な練習による上達しない徒労感やいつまで経っても進歩しないジレンマに悩まされることはないでしょう。
実際に当教室のレッスンでは「この部分が上手くいかない」などの相談をされたときに、この手順で練習をしてみるとすぐに出来るようになることがほとんどです。
レッスンや講座のご感想では
「ここにレッスンに来るといつも難所が簡単にできてしまう」
「オンラインなのにこんなに変わるなんて魔法みたい!」
「長年悩んでいたのがバカみたいな気がしてきました」
という声をよくいただきます。
正しい練習の仕方というものを知って、どんどん上達するスパイラルに入りたい方はぜひ最後まで読んでいってくださいね!
上手くならない練習あれこれ
それではまずは実際によくある上達に繋がらない練習をご紹介していきましょう。
とにかく最後まで通して吹く
本番が近くなってくるとつい気が焦って来るので、練習も表面を急いでなぞるような雑な内容になってくる。
そんなことってありがちです。
目の前にまだ出来ていない楽譜が山積みになっていたら確かに落ち着いてはいられないでしょう。
急いで練習して間に合わせなきゃなりませんよね。
でもその急いでさらう練習は、本当に効果があるやり方で出来ているでしょうか。
普段の急いでないときに大切にしてる音の出し方や譜読みの仕方など、いい加減になってしまってはいませんか?
どんなに急いでやらなきゃならないことがあったとしても、それが一時的なことだとしても、行った動作は確実にあなたの奏法として身に付いていきます。
「本当はこんな吹き方したくないけど、仕方ないからやってる」
その仕方ない好きじゃない吹き方を身につけていく努力をしてしまっているのではありませんか?
思ったようにコントロールして音を出すためのほんの少し時間、それって1秒とか2秒とかそんなものでしょう。
そのほんの数秒を惜しんで、本当に目標に間に合うなら省略してもいいかもしれません。
でも実際は数秒だけ多く練習してもあまり結果は変わらないでしょう。
それどころか望まない余計なクセは確実に付くのですから、はっきり言って逆効果です。
いくら本番直前で急いでいたとしても、混乱するクセや乱暴に吹くクセをつけようとするのはナンセンス。
直前にやった練習はやっぱり本番で出てきます。
どう吹きたいのかを確かめるのに乱暴に何度も流し吹きするのと、丁寧に一回だけ確認するのとで、かかる時間はさほど変わりません。
それならどっちのやり方を選ぶでしょうか。
本番はどっちの吹き方で演奏したいのでしょうか。
時間がない中で練習するとき、頭に入れておくといいかもしれませんよ。
指に覚えさせる練習
これってもっと練習しておいたら指が自動運転になって間違えなかったのでしょうか。
いいえ、そういうことではありません。
もしかしたら自動運転をしているつもりで指をどう動かすか考えるのを止めたから、動作の意図があやふやになって間違えたのかもしれませんよ。
何かモノを覚えるのは言うまでもなく脳です。
呼吸をしたときに空気はお腹ではなく肺に入るのと同じ、当たり前な身体の仕組みです。
練習によって指が無意識でも動くような習慣動作にすることはもちろんできるでしょう。
でもそれは指自体が動作を覚えるのではなく、脳がそういう動きとして記憶するのです。
指の練習は指を動かす特訓ではなく、どんな風に指を動かすか考えるスピードを上げていく思考の慣れを作るものでもあります。
何の意図もなしに指が勝手に動くというのは神経トラブルの可能性がありますから要注意です。
第一、音楽を演奏するのに何の意図もないというのはおかしなことですよね。
指の練習をするとき以外にも「身体で覚える」くらいの練習が必要な場面では、脳の指令としてはどんな意図を持ちたいのかを考えておきましょう。
無意味なゆっくり練習
初めての曲をゆっくりから練習するのは
・指を慣らすため
・楽譜に慣れるため
・ブレスやアンブシュアのコントロールに慣れるため
という目的があるでしょう。
ではそういう目的にどれくらいの精度で向き合っていますか?
指が迷いながらも何とか一回目的の運指になったら、それでもう慣れたということにしていませんか?
音がドかレかミかわかったら譜読みは完了にしていないでしょうか。
それではゆっくりやる意味があまりないかもしれませんよ。
指の動きに注目するなら、どの音からどの音に行く時に滑りやすいのか引っかかるのか、それがわかったら具体的に何の指が遅いのか速すぎるのか、それを知って改善するためにゆっくり吹くのです。
楽譜に慣れることだって、ドレミと順番に音が並んでるのかドミソと離れた音に進んでるのかで、装飾的な飾りの音形なのか和音を感じさせたいのかなど、意味が変わるし吹き方も変わります。
ただ書いてある音を知るだけでなく、何の音がどういう意味でそこに書いてあるのか考えて、それに見合った吹き方を見つけるのが楽譜に慣れるということでしょう。
初見でインテンポではそういうことに追いつけない場合に、ゆっくり練習をするのです。
そんな風に観察や分析をしながらだと、テンポは遅くても脳内かなりは忙しいもの。
こういう観察分析を繰り返すうちに脳の情報処理速度がは上がってくるので、結果的にテンポが上げられるのです。
ゆっくりだからってボンヤリ吹いていては全然意味のある練習になりません。
何のために何をするのか考えながらする練習は、短時間で上手くなるために一番の近道になりますよ!
頭を使った練習で確実に上手くなる
難しいパッセージを練習しているときに何度も繰り返してるのにどうしても出来ないなら、それはできるようになるための練習が出来ていないということ。
そんな場合は練習の仕方を工夫するとうまくいくようになるかもしれません。
たとえば引っかかる箇所がいつも同じだか違うかはわかっていますか?
引っかかってるのに気づいてないというケースもありがちですが、いつも同じところでつまずくのと毎回吹く度に違うところでつまずくのでは原因が違います。
吹く度に違うところでつまずく場合
毎回吹く度に違うところでつまずくのは、楽譜に書いてあることが把握できていないということ。
まずは音楽の流れを把握して、次にどんな音形が来るのかを知りましょう。
吹き手が予想外の音に驚いて戸惑っているなら、お客さんに作品の良さを伝えるような段階ではありません。
まずは自分がびっくりせずに引っかからずに曲を通せるくらいに慣れることが必要です。
大きな流れはわかっていても細かい音形で一つ一つの音がわかっていない、と言うのも同じこと。
似たような連符に見えてもその連符を構成する音によって印象は変わります。
滑らかな動きなのか、揺さぶるような動きなのか、浮遊感を出したい動きなのか、そういう楽譜に書いてある作曲者の意図が把握できていなければ、お客さんではなく演奏している自分が毎回新鮮に驚いて引っかかるでしょう。
それは譜読み(アナリーゼ)という作業で解決することができます。
いつも同じ箇所で引っかかる場合
次にいつも同じ箇所で引っかかるという場合を見てみましょう。
これは楽器や身体のコントロールの甘さが原因になっていることが多いもの。
それならスムーズな進行を妨げる要素を解消しなければ、何度同じことを繰り返してもできるようにはなりません。
例えば
・音が他に比べて大きく跳躍しているところ
・レジスターキーの押し離しが必要な動き
・キーの押さえ具合によって息の通る管の長さが変わるところ
・息の通りが悪くて鳴りにくい音を含む音形
・重いキーを使うので作動するのに時間がかかる部分
そんなところで問題が起きてはいないでしょうか。
引っかかってしまう原因がわかったら、それに見合った対処をしていきます。
・特定の音でもっと息を入れる
・もたつく指を速く動かす
・力の必要な箇所で指だけでない腕などのパワーも利用する
などなど。
不具合の起きる原因によって対処法は様々なので、正しく原因を見極めて解消するためのコントロールをしましょう。
また、本当はもっとたくさんの息が必要なところで指のトレーニングをしても無駄であり、より精度の高いソルフェージュが必要な場面で息をやたらに入れたりしても無益です。
そういうトンチンカンなトレーニングは新たなトラブルを引き起こすことにもつながるので、原因と対処法を正しく把握することは大切です。
その一連の作業が自分で出来ない場合には、専門家に不具合の原因特定と解決方法の提案を代わりにやってもらう、それがレッスンというもの。
うまくいかないときには必ず原因があって、世界のどこかにそれを問題なく演奏できる人がいると言うことは上手く行かせるための方法もあるということ。
諦めずに取り組んでみてくださいね。
ゆっくり練習するときの手順
それでは最後に、ゆっくり練習するときの手順を具体的にまとめてみましょう。
step
1吹きにくいところをチェック
まず最初にゆっくり吹いたときに何となく指をたくさん動かす場所やアンブシュアや息の吹き込み具合が大きく変わるなと感じるポイントをチェックしてみましょう。
そこで奏法上のコントロールをする必要があれば、テンポを上げたときにも同じ操作をしないと音はかすれたり外れたりするでしょう。
どのタイミングでどんな操作が必要か把握して、それを実際に行えるテンポで吹いてみます。
もし上手くいかなければ確実に成功させられる速さまでさらにテンポを落としましょう。
確実に成功するという体験を繰り返して、脳に指令と動作を定着させます。
それが充分にできたら次の段階です。
step
2予想外の音をマークする
次は吹いてみたときに「予想外だな」と感じた音があったかどうかチェックしてみましょう。
例えば
・隣り合った音に進んでいた音型の中で突然離れた音に行くというイレギュラーな箇所
・今までの調の中では出てこなかったシャープやフラットなど
・長い上行形の中で出てくる短い下行音形
ハッとする要素はきっとそれぞれ色々あるでしょう。
こういう冷やり!ハッと!したところは、テンポが上がったら引っかかるポイントになってることが多いもの。
それは脳が処理出来ていなかった情報がそこにあったということですから。
「今ドキッとしなかったか?」
「おっと!と思わかなったか?」
自分の心によくよく確かめながら引っかかりがちなフレーズを通り過ぎてみると、どこで何を考えた感じたためにどんなことが起きたのかを観察出来るようになって行きます。
この自分なりのハッとする瞬間とその理由がわかったら、それを解決するために楽譜に目立つようにマル印をしたり、繰り返し吹いてみて音型に慣れたりいくらでも対策が立てられるでしょう。
このほんのちょっとの心理的な引っ掛かりをテンポがゆっくりのうちに解消していけば、テンポが速くなっても引っかかることはなくなります。
しかし些細な「おっと!」を見逃してテンポアップをするから、ある一定のところで「なぜか出来ないし原因もわからない」ということになるのです。
実際に引っ掛からなくても心の中でほんの少し感じる違和感があれば、対処可能なテンポのうちに慣れておきましょう。
step
3一目盛りだけテンポを上げる
奏法的にやりにくいことをや心の中でドキッとするような箇所を覚えて慣れたら、次は少しだけテンポを上げます。
ここではメトロノームをほんの一目盛だけテンポアップするのがポイント。
脳が「速くなった!」と感じるほど一度に上げてしまってはパニックを引き起こして、上達する練習にはなりません。
そしてテンポを上げたときにやりにくいところがないか、ヒヤリハッとする箇所はないか、STEP1から再度確認します。
何も問題がなく「絶対にミスなんかしようがない!」と思うくらい安定したら、またテンポを一目盛りだけ上げて再度のチェック作業。
その繰り返しが本当に上達につながる練習の仕方です。
まとめておきましょう。
ゆっくり練習の基本的な流れ
- 奏法の不具合をチェックする
- 予想外だと感じる音をマークして慣れる
- ほんの一目盛りだけテンポアップする
ただぼんやりと同じことを何度も繰り返しても時間のムダ。
上達したいと本気で思うなら頭を使って正しい練習をする、それが大切なことですね。
まとめ
さて、今回の記事をまとめましょう。
練習には上手くなる練習と上手くならない練習があります。
・雑でもなんでもとにかく最後まで通して吹く
・指に覚えさせようとして何も意図を持たず吹く
・ただテンポを落とすだけで無意味なゆっくり練習
こういうことはやめましょう。
プロ奏者なら当たり前に取り組んでいる手順で、楽譜に書いてあることを把握して、奏法的にも心理的にも引っかかりや問題がない状態を目指し、合格基準を厳しくして少しずつテンポアップをしていきましょう。
そうすることで無駄なくどんどん上手くなっていくことが出来るようになります。
ぜひこれからも楽しく演奏を続けて行ってくださいね!