音楽の本質はコミュニケーション、ということを以前の記事でお話しました。
ではリズムについても音程と同じことが言えるでしょうか?
有吉尚子です。こんにちは!
クラシックの作品ではリタルダンドや細かなルバートがニュアンスとしてたくさん使われますね。
繊細な揺らぎをお互いに聴き合い寄り添い合うというのは、ハーモニーを作るときと全く同じです。
とはいえルバートをしていいと言っても気まぐれに無限に遅くなったり速くなったり、というのは作品全体の整合性やアンサンブルのしやすさが崩れてしまいますね。
リズムの揺らぎを揺らぎとして感じるためには基準が必要です。
その基準というのは作品の持つテンポ感。
一定のテンポ感を共有した上で、速くなる部分があれば取り戻すようにゆっくりする。
また反対にゆっくりになる部分があれば元のテンポに戻るように前に進む、という行ったり来たりがルバートです。
もしも基準のテンポがなければ、戻っていく場所もありませんからどこまでもズルズル遅くなったり、とんでもない速度になって崩壊したり、ということが起きてしまいます。
そして一定のテンポを共有するために必要なのはメトロノームではなくて各自のソルフェージュ能力です。
(当たり前ですがメトロノームは本番では使えません)
人間は歩くことや心臓の鼓動などからして、そもそも一定のリズムで動くことはできます。
でも日常では精密なテンポを聴き取ったり表現したりということはまずなく大雑把な感覚で過ごすことがほとんどなので、精度を上げるにはやはりそれなりに訓練が必要です。
これは機械のようにテンポを刻めることが目的ではなく、小さな小さな揺らぎを聴いてキャッチするために感覚を繊細にしていく、ということです。
それができるようになると、アンサンブルで誰かがリタルダンドをかけ始めるよりも早く、におい始めた気配を察知して寄り添えるようになります。
ものすごい名手とのアンサンブルがとても快適なのは、そういう研ぎ澄まされた感覚でコミュニケーションを取ろうとしてくれるからなんですね。
自分のテンポが一定なのかそれともどこかに揺らぎがあるのか、そういうことを知るためにはメトロノームは役に立ちます。
でもチューナーと同じでテンポキープをメトロノームだけに頼るのは自分の基準があいまいになるので危険です。
ぜひ注意してみてくださいね!