今回はゆらぎのある歌い方の練習についてご紹介します。
これは無拍子でフェルマータばかりの現代曲でない限り、メトロノームを使うのがおすすめです。
もしかしたら「メトロノームで練習したらカチカチで面白みのない演奏になっちゃう!」と思うかもしれませんね。
何の基準もなしにテンポをキープしつつ歌えるなら、メトロノームなしで練習するのもいいでしょう。
でも日本のプレーヤーは言語の習慣からの影響からか「歌う=遅らせる」になってしまって、歌い込もうとするほどズルズルとテンポが遅くなって戻せないというパターンがよく見られます。
反対に緊張と興奮でテンポを上げたきり戻せなくて、見せ場や難所で自滅するというパターンもよくあります。
押したら引き、巻いたら緩む、その押し引きが演奏における抑揚です。
バランスを取って帳尻を合わせるのも大切な要素。
思い切った抑揚が付けられず棒読み演奏になってしまう方は、帳尻合わせに自信がないというのも揺らすのが怖い理由のひとつでしょう。
揺らした後で戻ってくる基準としてメトロノームはかけながら揺らす練習をするのはおすすめです。
この時、メトロノームの鳴っている音全部にピッタリ合わせるのではなく、小節頭の拍やフェルマータ明けに戻って来たいポイントを決めて、そこで元のテンポに戻ってこられるよう歌い方や揺らぎ方を調節するのです。
その戻ってくるための指針を持った上で、音が遠くに離れていく跳躍のときやフェルマータ前など、溜めたりゆっくりしたりする部分はどのタイミングからどんな風に緩めるのか溜めるのか、自分でしっくり来る歌い方を探ってみましょう。
またスコアを見て揺らして大丈夫なのはどの音なのか、他の楽器と一緒になるのはどの音なのか、自由に揺らした後にある一緒の音をどうやったらお互いに合わせやすく吹けるか、そういうことも合わせ前に実験して準備しておきましょう。
どんなに緩んだり溜めたりしても戻って来られたらそれは「抑揚」ですが、テンポ自体が変わっては効果がないどころか芯のない気持ち悪い演奏になってしまいます。
メトロノームはそれを防いでくれる練習の心強いサポーターです。
練習方法のひとつとして知っておくと役に立つかもしれませんね。