今日は改めて演奏の他にわたしがレッスン活動をしている理由と目指しているものについてのお話をしたいと思います。
そもそもわたしは「音楽の先生」になるつもりはありませんでした。
自分が演奏するプレーヤーでいられればそれで良かったんです。
なので学校教員の免許はあえて取りませんでした。
演奏活動をしていきたいからこそ誰よりもやってると言えるくらいたくさん練習をしたし、積極的にオーディションを受けたりコンクールにチャレンジしたりして活動を広げて行ったんです。
ところが。
ある程度のところまで行ったらそれ以上なにをしたらいいかわからなくなったんです。
楽器のコントロールテクニックを磨くトレーニングとしての練習は本当にたくさんしてきました。
なのに音楽的な歌い方などは感覚的に何となくの雰囲気でやる以外の発想が無かったんです。
だからあるときに「音楽的ってなにか」「芸術の魅力って」「美しさってどういうことか」と思ったときに何を拠り所にしたらいいかわからなくなったのですね。
指をどうやって速く動かすか、跳躍をどうやってきれいなレガートにするか、タンギングを速くやる方法は、そんなことはわかっていましたが音楽性や歌い回しの学び方を知らなかったんです。
というかどこかで学べるものだということも知らないし、誰かから教われるかもしれないなんて考えてもみませんでした。
さらに音程やリズムが揺れたときに戻ってくる軸もありませんでした。
だから誰かの演奏を聴くときもやたらめったら不整脈みたいな揺らした演奏をしているのか、音楽的な解釈やソルフェージュの裏付けがあって整合性のある節回しなのか見分けが付きません。
指や舌が速いなんていうのは音楽の深さや美しさとは何の関係も無いことがすでにわかっていたのですごいとは思いませんでしたが、「こんなに大胆にテンポを揺らせるなんてすごい勇気だ」なんてトンチンカンな感想を持ったりしていました。
そして自分が歌い回すフレーズをやるようなときには、メトロノームやチューナーが手放せません。
さらに合奏になったときにメトロノームやチューナーでは合ってるのに何かズレて聴こえるなんてことの原因も対策もわからなかったんです。
それはソルフェージュが出来ていないことと、和声や対位法、音楽理論などアナリーゼが実際の音楽と結びついていないことが原因だったのでした。
学校の試験で点数化できる成績なんかじゃ測れないことが足りてなかったんですね。
モヤモヤし続けていたある日、とある音楽プロデューサーが「ソルフェージュをもう一度やり直してみたら?」と声をかけてくれたのがきっかけで一から学びなおすことにしました。
そこでハーモニーやリズムを聴く時耳を傾けたいポイントや響きというものの作り方と自分の中に持っておきたい基準を、
さらにアレクサンダーテクニークで身体と心のコントロールについて、
ダルクローズのリトミックではアナリーゼと音楽の結び付けや誰かに教える時の伝え方、
などなど音大では学ばなかったたくさんのことを身につけました。
(ここでは触れてませんが大学は大学で価値ある学びがあったのでムダではありません)
他にもいくつかの心理学系のメソッドや子供に教える手法や指揮者のための勉強会など役に立ちそうなものは手当たり次第に試したんですね。
そうやって色んなところから情報を拾い集めるように学んできました。
学びを進めていくうちに、聴いた音の何が良いか良くないか、趣味がいいってどういうことか、歌い回すときの基準は何なのか、揺らしたときに戻ってくる軸は、なんていうそれまで知らないせいで足枷になっていたことがわかって、今度はそれが演奏するための武器になることを実感していきました。
そうこうするうちに音楽の演奏に役立つものってここに集約できるなと思ったのがソルフェージュとアナリーゼ、そしてアレクサンダーテクニーク。
これを早い段階で知っていたらこんな回り道は必要なかったし、もっと若い楽器を始めた初期にこれを学べば良いよとアドバイスをくれる人に出会えていたらどんなに良かっただろうとつくづく感じました。
そして専門家を目指す人だけでなく趣味として音楽をする人が学んだらどんなにムダなく効率的に上達して音楽的にも深いところに行けるだろうかと思ったのです。
そんなわたし自身がもっと早く知りたかった今後の音楽ライフが変わっていくきっかけになるようなこと、拾い集めてきた知識やスキルを演奏をしたいと思う全ての人が身につけやすく学びやすい形にまとめるという作業は、絶対に今後の音楽業界全体のクオリティを底上げしていくし活性化して盛り上げていくことに繋がると気がつきました。
ということで、講座やレッスンという形にわたしがあちこちで学んできて実際の演奏活動で役立ったことを厳選してまとめて、音楽センス引き出しレッスンとして現在お伝えしています。
自分が通った道を誰かが辿るならそっくりそのままではなくて通りやすいように道を整備するのが先に通った人の仕事だと思うから。
そんなこんな始めは教えるという選択肢に入れもしなかったことを演奏のかたわらしていくのがわたしの人生のミッションだと思うようになって、今はこの活動をしています。
もっともっと音楽を心から楽しめる人が増えて行きますようにという願いを込めて。