アレクサンダーテクニーク 思考と心 身体の仕組み

ベストを尽くす!って何をすること?

「ベストを尽くす!」

という言葉、実はずっと疑問を感じていました。

ベストを尽くさない場合と具体的に何が違うんだろう?と。

他のことを優先したり、どうでもいいと思ってやるのは「ベストを尽くさない」ではなく「別のことをやっている」「他に気になることがある」だと思います。

ベストを尽くしてことを行うのと同じ手順同じ意図でベストを尽くさないというのはどういうことかって言われると、明確な答えは出てこないような気がするんですね。

たとえば学生のときの実技試験前。

「今度の本番は試験だから気合いを入れよう!」

なんて言葉を不思議に感じていたんです。

だったら試験じゃない本番は気合いが入ってないの?

試験じゃなくたってわたしたちはその時に知ってて思いつく限りの最高の練習の組み立て方をしてそれが計画通り上手く進むよう他の用事を調整して、出来る限り思った通りの演奏をしようと準備しているはず。

じゃあそれって結局は普段通りなのでは?と。

そしてこの「ベストを尽くす」とそうじゃないことの違いというのは実ははっきりした答えは出てこないケースが多いってことをF.M.アレクサンダーさんも著書に書いているんです。

実際に何をしたらいいのかわからないような漠然とした意図はムダな力みに繋がるだけで、具体的な行動プランとしては全力だろうと全力じゃなかろうと同じである、と。

はっきり言ってしまうと「全力で、ベストを尽くして」という意図だけだと身体にとっては何をしたらいいかわからないので固まる傾向に繋がりやすいんです。

例えば空いてる限りの時間全部を練習に当てるよう予定を組むとか、練習の手順を明確にするとか、実際に計画に沿って進めるとか、そういうのは具体的な作業です。

だから身体はどんどん動けますが「がんばる、気合を入れる」では具体的にどんな動きをしたらいいかはわかりません。

何をしたら良いかわからないからあちこちの拮抗筋が働きあって固まってしまうんですね。

それに「全力」「頑張る」「気合を入れて」という言葉は科学的でもないし、たとえ上手く行ったとしても再現性がありません。

ついつい使ってしまいがちだし言っちゃいけないようなものでももちろんありませんが、一種のおまじないみたいなものなのかもしれません。

本当に目指したいことや達成したいことがあるときは、もっとそれに到達するために適した意図があるかもしれませんね。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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