CD伴奏での演奏をしたことはありますか?
体験した方はわかるでしょうが、実は音源との演奏は生身の人間とのアンサンブルに比べるとものすごくやりにくいもの。
何がやりにくいかというと、会場の残響や聴いてる人の反応によってテンポやルバートを変えられないから。
クラシック音楽の魅力を作るひとつの要素である《その時その場での偶然性》が排除されてしまうのです。
揺らぎや溜めがあるということは、その先に向かう期待感があるということ。
奏者も観客も含めた会場内の人々がどれくらい音楽を味わっているかによって、期待の持たせ方(揺らぎや溜め)は調節されるもの。
それが出来ないということは、奏者だけでなくお客さんにとっても「寄り添った」演奏になるのは難しいでしょう。
それにソロが先に出て後から伴奏が重なってくるような曲はできないので選曲も制限されます。
また「今回はこうやってみよう!相手はどう反応してくれるかな?」というワクワクする仕掛け合いのようなことも当然ながらできません。
毎回同じだと思っていても人間とのアンサンブルでは、少しずつお互いに反応しあって小さな揺らぎを作りながら演奏していることをつくづく感じます。
せっかく生身の相手とアンサンブルをする機会があるなら、ただお互いに「楽譜通りに」「練習と同じように」、ということが目標になってはもったいない!
「少しゆっくりしたいのかな」「ここは前のめりに行きたそうだ」など、お互いに感じ取り合いながら反応できるのが生身の誰かと一緒に演奏することの醍醐味なのではないでしょうか。
映画名曲集(CD伴奏付き)などの楽譜がお手元にあったら試してみると、生身の人間同士のアンサンブルとの違いがよくわかって面白いものですよ!