「正しい動きで演奏できているかチェックしてもらいたい」、レッスンでそんなリクエストをいただくことがよくあります。
そういうときにわたしはいつも「正しい動きというのはどういうことだと思っていますか」とお尋ねします。
演奏のフォームや姿勢は唯一の正解があるものではありませんが、有利な動きと不利な動きは確かににあります。
とはいえ、誰しもその時に持っている情報の中で最善だと思うことを選んで行っているはず。
だからその最善だと思った方法が間違いだということは無いのです。
もっと良いアイデアを知ったらそちらを選ぶかもしれなくても、今現在持っている選択肢の中で悪いと思うものは誰だって選びませんからね。
演奏フォームについては
・背中をまっすぐにして
・脇はこれくらい開いて
・ブレスのときは必ずここが動いて
などある種の「型」みたいなものがあると思っている方もいますが、それはその方法で上手くいっている人の個人的な手法です。
当然ながら誰にでも同じことが当てはまるわけではありません。
骨格も筋力も経験も目的や望みも、全部が人それぞれ違うのですから。
そして「これはいい!」と思った奏法があったとしても、それが一生使えるかどうかは別問題。
体力や練習に使える時間が変わればもうそれは良いアイデアではなくなるかもしれないし、もしかしたらもっと良い方法を知る機会があるかもしれません。
大事なのは正解の動きを出来ているかどうかではなく、その時々でより良いやり方を選ぶために変化し続けること。
ひとつの「正解の奏法」に固執して新しいものを試せなければ、その方法が合わなくなったときにどうなるでしょうか。
その時々で最適なものを選べなければ、無理があってもひとつの決まった奏法を続けるしかありません。
それは怪我や故障に繋がるリスクが一番高い向き合い方なのではないでしょうか。
「正しい姿勢になっているかどうか」という問いにはそんな風にお答えしています。