コミュニケーション 思考と心

褒められるための演奏

楽器を持ってすぐの頃、ただ単純に音が出ることが面白かったり、楽器をあちこち操作すると曲になるのが楽しかったですよね。

それって自分と音楽だけで充分完結した関係と言えるでしょう。

でもだんだん慣れて上手く演奏できるようになってくると、周りからの評価が気になってくるのですよね。

「楽器が出来るなんてすごい」

「コンクールで金賞なんてすごい」

「こんな難曲が出来るなんて尊敬」

などなど。

褒められることは、人間が本来持ってる欲求の一つである承認欲求が満たされるので、気分良くなるのは当然のこと。

素直にその言葉を受け取って喜ぶのは心の健康のためにも大切です。

ただし。

褒められて嬉しいというのは結構大きな満足感があるので、一度味わったらクセになる側面もあります。

「もっと褒められたい」「もっと大勢から認められたい」とエスカレートしていくと他人と競争をしたくなります。

○○さんよりもうまくなりたい!

コンクールで勝ちたい!

パート内で一番になりたい!

そうなったとき、果たして本当に音楽を楽しんでいるでしょうか。

それとも競争に勝つことを楽しんでいるのでしょうか。

「これが得意」というのは他者との比較が価値基準であり、「これが好き」というのは自分がそのことを好きかどうかだけが価値を作るそうです。

競争をし始めたら勝てば満足感が得られるでしょうが、そこには負ける人が必要です。

「もっと認められたいけれど上手に吹けないから辞めよう」

そんな理由で音楽をやめてしまう残念な例も少なくありません。

音楽をやるのは他の人よりも演奏が得意だからでしょうか。

初めは「ただ自分が楽しいから」とか「好きなことを誰かと共有したいから」という理由で演奏していたのではありませんでしたか?

実技試験の成績次第で履修できる授業や参加できるコンサートが決まることもある音大生ならともかく、趣味でやってるのに誰かより下手だったら演奏する価値がないなんて状況は息苦しいでしょう。

「好きだからもっと上手くなりたいし、色々なことが出来たらもっと楽しくなりそうだからチャレンジしてみたい!」

そういう姿勢の方が長く続けられるし、チャレンジすることの全てを楽しめるのではないでしょうか。

コンクールや試験でウケの良い演奏というのは確かにあります。

でも、あなたが本当にしたい音楽はそれと一致していますか?

心からやりたいことをして結果的に評価されるなら、それはとても幸せなことでしょう。

あなたが本当に喜びを持って取り組めることは何ですか?

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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