「ソルフェージュって歌のレッスンのこと?」というご質問をたまにいただきます。
まあ下手よりは上手の方がいいのかもしれませんが、わたしたち管楽器プレーヤーは歌うことにはあまり興味がありませんよね。
そして当然ながらソルフェージュは歌が上手になることが目的ではなく、自分の専門の楽器で思ったように演奏できるようになることが目的です。
とはいえ実際にレッスンでは聴き取りやリズム練習の他に、やはり歌ってみるトレーニングも行います。
それはなぜかというと、ある程度楽器を吹いていた経験のある人は、音の高さを楽器に依存して出してしまうということがあるから。
どんな高さの音なのか実は頭ではよくわかっていないけど、とりあえず決まった指とアンブシュアでなんとなく出せてしまう、そういうことはありがちなのです。
「出せてるならそれでいいじゃないか」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
運指とアンブシュアだけで出したイメージの無い音、それは本当に思った通りの出したかった高さの音でしょうか。
音が出てから「あれ、この高さだったっけ」と思ったのではありませんか?
また、音の高さをイメージせずに音の硬さ柔らかさ、スピード感、ニュアンスや表情、そういうものが具体的にイメージできるでしょうか?
言葉で表現するのではなく、明確な音そのものとしてのイメージです。
誰かの出した音を思い出すことはできるかもしれませんが、まだ聴いていない自分の出す理想の音が明確に思い描けるでしょうか。
それがとても難しいのは、言葉を使わずに哲学的な思考の掘り下げがしにくいのと同じです。
実際に演奏を聴いてみても、どんな音を出したいかという意図の無い音というのは、あやふやで何をしたいのかわからない当てずっぽうに聴こえるもの。
たとえば試しに普段楽器で吹いている短い音形を声で歌ってみましょう。
ピアノかスマホのアプリか何か音の出るもので確認しながら歌うと、きっと音程だけでなくニュアンスまで思った通り正確に表現するのは意外に難しいことに気付くはず。
出したい音がどんな音なのかはっきりイメージできるようにすることと、そのイメージを洗練させていくのが視唱という歌ってみるレッスンなのです。これは絶対音感ではなく、アンサンブルに必要な聴こえた音の微細な明暗などのニュアンスに反応するためのスキルでもあります。
声の質や喉などのコントロールなどではなく頭の中の音を調律していく作業なので、歌を上手にするためのレッスンに似てはいるけど全く別物なのです。
だから逆に歌が上手になりたい方は、ソルフェージュ講師ではなく歌の先生にレッスンしてもらうのがオススメでもありますよ。