前回まで楽器に息を吹き込む瞬間につい無意識にもとの吹き方に戻ってしまうことについて取り扱っていました。
「吹く」という意図を持たないで関係ないことを考えながら吹くのはセットになった意図を切り離す体験をするのにはとっても役に立つ手法ですが、大切な本番で明後日なことを考える人はいないのであまり実用的じゃありません。
今回は音を出す一瞬に元に戻らず新しいやり方で発音する現場で使えるアイデアについて取り上げてみましょう。
とっさの反応が必要な場面で「今回はこう対応してみよう!」なんて思いが出てくる人はほとんどいないでしょう。
大抵が過去に上手く行ったという記憶に結びついたいつものやり方で切り抜けようとすることがほとんどですよね。
つまり最後の集中したい一瞬でついうっかり元のやり方に戻るのは新しいやり方よりも古いほうが慣れていて安全で信頼できるからなのですね。
では。
そんなとっさの場面や集中したい大切な局面にいるときに今まで通りか新しいやり方かを選ぶにはどうしたらいいと思いますか?
当たり前ですが、いきなり大切な本番で実験せずまずは安全な場所で実験しましょう。
楽器を構えるところやアンブシュアのセッティングなどは注意深く背骨が縮まらないよう気をつけながらできたとします。
そのときにはちゃんと意識に「こうやろう」という意図がありましたよね。
それ、息を吹き込む瞬間にも思っていますか?
もしかして忘れていませんか?
ほんの一瞬だけ意図が抜けて頭が空白になった状態でもしくは息のことしか考えていない状態で吹いたら、それは無意識で習慣的な動きに任せるということですから「息を吹き込む」=「頭背骨を固める」と意図がセットになっているならそりゃ元に戻りますよね。
実際やってみながら動きの中でこれに気がついたらしめたもの。
(この文章を読んだだけじゃ何も変わりませんよー)
息を吹き込む瞬間に頭首を固めていることに気がついたらそのまま吹かないでいったん楽器を降ろします。
「まあいっか」とそのまま吹くのは固めと吹込みがセットであるというのをより脳と身体に覚え込ませるだけですから。
この動きは違うから一旦やめて新たに思い直してから吹く、これだけでずいぶん選択肢が増えるのですね。
これを古い反射や反応の「抑制」って言います。
やりたくないことは妥協してそのまま続けず気づいたときにはやめるのです。
その選択の積み重ねで本番のような切羽詰まった場面でも意図的な選択が出来るようになっていくのですね。
妥協して「固まってるのはわかってるけどそのまま吹いちゃおう」なんてやってると、選べる選択肢は固まって吹くという動きだけ。
それじゃ新しい動きになるはずありませんね。
気づいたらやめる、自分で気づかないならちゃんとわかる人に見ててもらう、その繰り返しでいまよりもっと演奏を楽しむために選べるものを増やして行ってくださいね!