初めての曲やフレーズを見た時に自分がどう感じるか、この「感じ方」に自信はありますか?
つい誰かの感じ方や解釈を知ってから自分の考えをまとめようとしてはいないでしょうか?
それは「自分では正しく理解出来ないのではないか」などと、感じようとするのではなくわかろうとする姿勢があるからかもしれませんね。
もちろん理論を知って、そのガイドに沿って考えるのは大切なことです。
とはいえ理論だけ知っていても、音楽は出来ません。
何かを表現したいなら、「本にこう書いてあるから」「分析するとこうだから」というとこだけでなく、「それを自分がどう感じるのか」という視点が必要です。
出す音が「自分の言葉」でなければ他人に何かを訴えかけることは難しくなるでしょう。
これは一言で「センス」と言われてしまいがちな部分で、生まれつきや才能の話と混同されることが多いもの。
しかしこのセンスや感じ方は天然のものだけでなく、実は訓練や普段の心がけでいくらでも引き出すことが出来るのです。
アナリーゼを学んで着眼点を知るのもひとつの有効な手ですし、心の感度を上げるために異分野の芸術や他ジャンルの音楽に触れるのもとても役に立ちます。
わかろうとするのではなくどう感じるのか、ただただ自分の心を見てみるのです。
その時に誰かのコメントや感想を参考にする必要はありません。
日記や独り言などでもいいので、自分がどう感じたかを言葉にしてみましょう。
そういう自分の心の動きに気づくことの繰り返しで、普段の生活ではフタをしがちな「自分が何を感じるか」「気持ちにどんな変化があるか」、ということに敏感になっていきます。
音楽家は神経過敏だとか感情の変化にこだわりすぎるなどのイメージがあるかもしれませんが、表現をするためにはそういう感覚の繊細さは大切です。
ついでに言うと、感覚が繊細であることと感情に流されやすいのは全く別のこと。
繊細な変化に気がつくようになったら理性的でいられなくなる、ということはありません。
理性的かどうかは、感情をコントロールするかどうかで変わるもの。
心の安定した人は鈍いのではなくコントロールを出来る人です。
良い音楽のためには、演奏技術だけでなく心の感度を上げることも考えていけると良いですね。