「いつも棒読みのような演奏になってしまって、歌うってどうしたらいいのか悩んでいます。」
というご相談をいただきました。
「もっと歌って!」とはよく言われる言葉ですが、歌うってつまりはどういうことなのでしょう。
例えばこれが本か何かの言葉を読むのだったら、棒読みでは不自然なので自然と抑揚をつけたくなりますよね。
どう抑揚をつけるかは人それぞれでも、「言葉の意味が伝わるように」と思ったらまっすぐ文字に対応する音を並べるAIのような読み方ではなく、強くしたりゆっくりにしたり間をあけてみたりと何かしら工夫をするでしょう。
言葉で考えると「言いたいことや伝えたいことは特に無いけど何か主張しなければ!」なんておかしいですよね。
音楽も同じです。
盛り上がったりホッとしたり次に進みたかったり止まりたかったり、そういう音楽からの主張は楽譜を読めばわかります。
私たちは日本人は日本語ならいちいち分析なんてしなくても意味がわかりますが、外国の言葉はまず文字が理解できないと言葉として認識さえできません。
文字が読めても言い回しによって額面通りでないこともあったりして、文化的な背景なんかも知らないとわからないこともあるでしょう。
楽譜にも、そういう言語の前提みたいなものはやはりあるのです。
作曲者が言いたかったことが書いてあるのに、楽譜の読み方を知らない人には意味の分からない図形の羅列にしか見えません。
意味の分からない図形の羅列から何か感じ取って主張しなさいと言われたって無茶ですよね。
まずはその図形がどういうことを表すのか、どんな意味でそこに並んでいるのかを知ってから、自分がそれをどう思うか感じるか考えるのです。
「こんな風にも読めるしあんな風にも解釈できるな」
「あれとこれならどちらの意味に捉えたらしっくり来るだろう?」
そんな風に丁寧に楽譜を見る時間を取ってみたら、どう歌いたいかのアイデアも湧いてくるでしょう。
楽譜の読み方を知って音を出す前によく読み込む練習は、「とにかく音を並べる、それができたら何か表情をつける」なんていう方向性の定まらない練習よりずっと短時間で音楽的な演奏につながります。
考える力があって忙しい大人にこそおすすめですよ!