本番前や合奏中に当てられて一人で吹かされるときなど演奏者が緊張を感じる場面はたくさんあるものです。
緊張したら「落ち着いて」と自分に声をかけている方もきっと多いでしょう。
でも緊張は本当に落ち着かせた方が良いのでしょうか。
高めたほうが良い緊張と落ち着かせた方がいい緊張
緊張はパフォーマンスを良くするための大切なエネルギーなのでせっかくなら落ち着かせないで使った方がいいもの、という場合の緊張とはアドレナリンが出ているちょっとした興奮状態のこと。
これは動きをスムーズにしたり痛みや不具合を感じにくくさせるパフォーマンスの味方になるエネルギーです。
反対に落ち着かせた方がいい緊張というのもやはりあるもの。
それはどんなものかというと身体が固くこわばって身動きしにくくなったり、視界が狭くなって周りが見えなくなったり、という反応が起きているとき。
つまり怯えているときです。
何かに怯えている状態では演奏がうまくいくことは困難なのでその場合はリラックスしたり身体をほぐしたりするのが必要になります。
緊張と興奮は別のもの
そもそも全く違う種類の反応である興奮と怯えを一緒くたにして「緊張」と呼び、とにかく落ち着こうとするのは間違いなのです。
興奮はせっかくの演奏のための燃料なので鎮めたりせずむしろさらに高めて行きましょう。
反対に怯えは解消しておく必要があります。
ひとことで「緊張」としてまとめず今自分に起きている反応がどちらでどんな対処が必要なのかは冷静に見て行きたいものですね。
成功するときと失敗するとき
演奏のときには興奮は燃料なのでどんどん使った方がいいものです。
とはいっても興奮のあまりテンポがどんどん加速してしまったり震えが出てきたり思わぬところでミスしたりするのは困りますよね。
興奮を利用するといっても闇雲に気分を盛り上げればいいというわけではありません。
使い方にもコツがあるのです。
本番のときに興奮が高まって加速したり譜面を見失ったり震えてしまったりなどおかしなことが起きてしまうとき、あなたは一体どんなことを考えているでしょう。
失敗しがちなときは
上手くいかないとき、もしかしたら
「絶対上手く行かせよう!」
「良いところを見せてやる!」
「どうしても合格しなくちゃ!」
ということを考えてはいないでしょうか。
こういう思考のときは得てしてあまりうまくは行かないものです。
うまくいくときは
反対に興奮しながらも
「ここで指をこうやって」
「息をこうコントロールしよう」
「頭に浮かんでる情景を描こう」
という考えを持って演奏したらどうでしょうか。
実はこちらのほうが上手くいく確率が高いのです。
上手な興奮の使い方
なぜ同じ興奮でも結果に違うが生まれるかというと、上手く行かせよう系の思考では身体が具体的にどんな動きをしたらいいかがあやふやだから。
反対に実際に動きとして出来ることを身体への指示として出す方が、その通りに動けるのでうまくいきやすいものなのです。
上手く行かせたいならとにかく興奮して自分を煽ればいいというわけではなくてアドレナリンなどの燃料を使ってどんなことをするのかが明確になっている必要があるのですね。
興奮の暴発を起こさないために
興奮したときに何をすればいいか明確でなければその燃料は余って余計なエネルギーになってしまい震えになったり加速を招いたりなど暴発してしまいます。
暴発しないようにとエネルギーを抑えようとしてもそれはうまくいきません。
もう出ているアドレナリンは引っ込められないのですから。
高まったエネルギーの適切な出口を用意すること、試してみてくださいね。