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ブレスでフレーズをぶち壊しにしないために

「ブレスが持たない」

「素早く息が吸えない」

「どこで息継ぎすれば良いのかわからない」

そんなブレスのありがちなお悩みと対処法をまとめてみました。

息が続かないブレスと続くブレスの違い

「ブレスが上手くいかず長いフレーズを吹いてるときにどんどん苦しくなってしまう」

そんな場合にはブレスの仕方に問題があるのかもしれません。

実際に試しながら、快適なブレスとそうでないブレスを比較してみましょう。

楽器はいりませんのでオフィスで休憩中など、チャレンジしてみて下さい。

 

ブレス比較実験その1

1.
息を吐けるところまで吐きます。

このときにお腹周りや胸や身体のあちこちで、どこが頑張ってるのか自分の身体を観察しながら行いましょう。

2.
吐くときに頑張ってたところはそのまま頑張り続けつつ、息を吸います。

3.
また吐きます。1.と2.を何回か繰り返してやってみましょう。

 

身体の具合や息の吸い心地がどうだったか覚えておきましょう。

 

ブレス比較実験その2

1.
その1と同じで、まずは息を吐けるところまで吐きます。

このときにお腹周りや胸や身体のどこが頑張ってるかさっきと同じように観察しながら。

2.
吐く時に頑張っていた部分は頑張るのをやめて緩めます。

緩めるためには時間をかけても大丈夫。

身体のどこも頑張らない状態のまま、空気が勝手に肺に流れ込むのを観察します。

3,
また吐きます。1.と2.を何回か繰り返してやってみましょう。

身体や吸い心地に違いはあったでしょうか。

実験はこれでおしまいです。

比較すると違いがわかりやすいものですね。

「お腹の支え!」と思ってブレスをするときには、実験その1に近いことをやっていたのではないでしょうか。

瞬間的に息を吸いたい時こそ、お腹周りの頑張りを一度解除して改めて吸うほうがラクにいい音で演奏するための助けになるものです。

 

全部の息を吐くことは不可能

人間の呼吸システムは生きるために吐いたら吸うように無意識でも働いてくれるものなので、「ブレスの前には息を全部吐ききってから吸う」と心がけている方も多いでしょう。

息が余っている状態でさらに吸うのは苦しいので、長いフレーズのためにたくさんブレスを取りたければまずは吐く、これは正しい意図です。

しかし。

肺の中の空気を全部を吐き出すというのは実は不可能なのです。

肺の中には息を吐き出した後に残ってる空気が成人でだいたい1.5リットルくらいあって、それを「残気量」というそう。

だからブレスの前に「全ての空気を絞り切る」とは考えなくて良いのです。

また、あまりにもギリギリまで絞り出すように吐いた後は、吹くための筋肉がかなり使われて力んでしまっているので、ブレスのためにその力みを解除することに余計に時間が必要になってしまいます。

極限まで息を吐き出すというのは、素早いブレスやたくさん吸ことにはあまり得策ではありません。

第一、そんなにぎりぎりまで吐き切るのは苦しいので、音も理想的なコントロールされた状態では出せなくなってしまいます。

それよりも苦しくなってくる前に、フレーズの切れ目できちんと吸えるよう準備・工夫をするほうが建設的でしょう。

全て吐き切る必要はないこと、知っておきたいものですね。

 

とっさにブレスが出来ない

忙しい箇所でブレスをする時や短い休符で息継ぎしたいとき、「吐くための力みを辞めたいけれど咄嗟にやめられない」というご相談をよくいただきます。

忙しいところでは「筋肉の働きをリセットした方が良い」と頭ではわかっていても、つい力みっぱなしになってしまうものです。

もしかしたら休符になった途端に「あ!ここで休むんだった!」と思っているうちに通り過ぎているということもあるかもしれません。

そんな場合は、「この後は一旦休んで力みを解除するぞ!」と事前に心の準備をして休符に入ってみましょう。

複雑なパッセージの難所を吹き切ろうと思ったら、普通はその箇所に差し掛かる前に覚悟を決めてから取り掛かるでしょう。

一旦吹くのをやめて筋肉をリセットするのも、動作の準備としては同じです。

とっさの反応が必要な場面では、何を意図するかを事前に決めておくことが大切ですね。

 

どうしてもブレスで力んでしまう

短い休符で素早くブレスをしたい場合には事前に準備をするのが大切です。

とはいえ「ここで力を抜くぞ!」と思っていても、あまり上手くいかないというケースも少なくありません。

これは「力を抜く」という意図が、「力を入れることを否定する」に似ているからかもしれません。

否定形の思考は何か動きを引き起こすのにはあまり適さないものですが、「力を入れるのをやめる」と思った時にはまず最初に力を入れることをイメージしてしまうでしょう。

その力を入れるイメージを改めて否定しているうちに、短い休符を通りすぎてしまいます。

ではどうしたら良いのでしょう。

ここでは「力を入れることをしない」の代わりに何をするのかをはっきりさせる必要があります。

曲の中では別に「力を抜く」という仕事がしたいわけではありません。

力みをやめるというのはただ単なる脱力とは違って、次のフレーズを新たに思い通りにコントロールして演奏するための準備です。

たとえば「次の準備をする」「新たに吹き込むために一旦吹くのを終える」「ブレス動作をしやすいような身体の状態を作る」など、人によってピンとくる言葉は違うと思いますが、実際の動きを引き起こす肯定的な表現で意図を持ってみるのはおすすめです。

・力みを解除するのは何のためなのか

・やりたいことは何なのか

力みの否定ではなく引き起こしたいことを建設的に考えてみると、自分にピンとくる言葉を見つけられるかもしれませんね。

 

ブレスとフレーズ

どんなにブレス動作について工夫しても、管楽器では息継ぎにいくらかの時間が必要なことに変わりはありません。

それにブレスは奏者のためだけでなく聴いてる人に呼吸させてあげるタイミングでもあります。

循環呼吸でずっと吹き続けているのを見ていると、吹いていないのに見ている方まで苦しくなったりしますもんね。

ギリギリまで粘って変なところで限界に達して大穴を開けてしまったり、大事な場面で音が痩せたりしないために、曲の中でブレスをする場所は事前に決めておきましょう。

 

ではどういう場所がブレスに適しているのでしょうか。

無傷で演奏するために、まずはフレーズの切れ目を狙いたいもの。

言葉の句読点と一緒で、フレーズの切れ目はお話が一段落する場所ですから。

でも、長いフレーズでとても最後まで一息では行けない場合もあるでしょう。

そういう長いフレーズではあらかじめ練習段階で、狙ったところまで一息で行けるのかどうかを確認しておきます。

そしてだめならだめで諦めましょう!

根性や気合いや練習で劇的にブレスが長くもつようになる、なんてそうそうありません。

本番は練習の時よりもさらに息がもたないことは想像できます。

だからこそ、行きたいところまで持たないとわかったならば、ジタバタせずに潔く善後策を講じるのです。

例えば、

・他の人が大きく吹いてる瞬間に吸うと決める

・どうにもならない場合は、ダメージが最小で済む箇所で一音抜いて吸う

・オケ中の長いソロも合奏の合いの手が一発ジャンと来る瞬間に吸う

などなど。

これは諦めるというよりむしろ最善の選択をするために事実を知ると言った方が正しいかもしれません。

大事なのはブレスを持たせることが不可能であるという現実を否定してもがくのではなく、あらかじめ対策を講じておくこと。

そうしなければ、とんでもないタイミングでフレーズがプッツリ切れる大事故に繋がってしまいます。

どこでどんな風にブレスをするのか考える、それは音楽を組み立てる作業の一つです。

楽しく管楽器を演奏するために必須のブレス、大切にしていきたいものですね。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。

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