「間違えないように」「ミスをしないように」そんな風に考えて演奏しようとするのはおすすめではありません。
なぜかというと、間違えなければ「良い演奏」になるわけではないし、ミスが出ないことが目的でもないから。
第一ミスをしないことだけを目標にしていては、エネルギーの低い覇気のない演奏になるだけでしょう。
それに、確実にミスをしない方法は一つだけあります。
それは「演奏しようとしない」こと。
失敗したくないからチャレンジしない。
怪我をしたくないからスポーツはやらない。
それなら新しいチャレンジによる成果やオリンピックの新記録は出ないでしょうが、ケガなく安全に過ごせるのは確かです。
でも演奏の時にはそんな風に無難にやり過ごしたいわけではないでしょう。
楽でもないし辛いことも多い演奏をわざわざするのは、間違えないためではありません。
好きな曲を紹介したいとか、楽器の魅力を伝えたいとか、頑張りを見てほしいとか、何かしらの肯定的な意図があるはず。
その肯定的な意図を実行しようとする動作、それが「良い演奏」を作るのです。
人間の身体は否定形の言葉ではなく肯定形の意図で動いています。
良い演奏をしたければ、間違えない代わりに何をしたいのかを明確にする必要があります。
そのときに何をしたいのかアイデアが湧かない人のために、楽譜というものがあります。
楽譜にはたくさんの表現のヒントが詰まっており、読む人の読譜レベルに応じて様々な情報を提供してくれています。
「良い演奏」のためには楽譜から音楽を読み取って、それを表現したいという気持ちを持つことがスタートライン。
その表現欲求を満たすための動作にちょっとしたミスが紛れ込んだとしても、それで演奏の魅力を損なうことはないのです。
「間違えない」は「良い演奏」とは違うということ、頭の片隅に置いておきたいものですね。