アレクサンダーテクニーク 思考と心 身体の仕組み

逆効果になる努力

 

ここぞ!という大事な場面で「何かしなきゃ!」「ちゃんとやらなきゃ!」と思ってついつい身体をこわばらせてはいないでしょうか。

演奏中に張り切って行ってしまいがちな無駄な動作の代表が、ブレスのときの力み。

ブレスのためにお腹付近で何か頑張るのは、結局要らない力みを生むだけでブレスの邪魔にしかなりません。

また、吹き込む時にもお腹をカチカチに固めてしまったら必要な繊細なコントロールができなくなってしまいます。

お腹はいつも柔らかく、発音や音色の操作のために繊細なコントロールをする余地を持っておく必要があります。

固まってしまっていたら大雑把な動きしか起こせませんからね。

わたしも以前はその要らないことを色々やっていましたが、多くの人がついお腹を固めて頑張ってしまうのはなぜなのでしょうか。

そのよくある理由が「頑張っている感じがするから」というもの。

人間の身体には働いていることを感じられる筋肉とそうでない筋肉があります。

心臓の筋肉なんて毎瞬毎瞬頑張っている感じがしていたら疲れてしまいますよね。

具体的には身体の表面の浅いところにある筋肉は、比較的動いてるとか働いている感覚を感じられやすいもの。

反対に深いところにある筋肉は、すごく働いてはいてもそれを感覚として知ることはほとんどできないそう。

なぜでしょうね?

わかりませんが生命体としてより重要な外部からの刺激に集中するためかもしれないし、内臓などの動きにいちいち気がついていたら脳がパニックになるのかもしれません。

それはともかく。

頑張っている感覚があまりないからと言って、必要な筋肉が働いていないとは限らないということです。

深層にある効率的に息を吹き込むための筋肉は、ちゃんと働いていたとしてもそれを感じられるわけではないのですから。

疲れないから頑張りが足りないなどというものではありません。

また、筋肉が疲れると働いた感がありますが、本当に必要な必要な働きをしたのかどうかは別問題。

もしかしたら演奏には必要ないことを頑張って疲れてしまっただけかもしれません。

息を吐くために働ける筋肉のほとんどは、あまり動きを感じられないそうです。

さらに腹直筋という一番表面にあって、深層の筋肉を邪魔しないため最後に働いて欲しい筋肉が、一番働いている感を脳に返して来るそう。

働いている感を得られるからといってこの腹直筋を最初に固めてしまうと・・・他の動きが不自由になって困ります。

わたしたち演奏者は頑張っている感を得たいのではなく、音楽のために効率的に吹き込みたいわけですから。

では何を判断基準に考えたらいいかというと、もちろん出ている音です。

頑張ってる感じのする筋肉で要らない力みをしていると、鳴りが悪くなり音質も固く鋭くなりがちです。

そういう音を出したい場面ではもちろんそれをするのはテクニックのひとつですが、無意識に常に必要なことではありません。

また、本当にやりたいことが効率的にできているとき、「何もしていない感じがする」とはよくいわれます。

筋肉が疲れたかどうかより出た音がどうなってるか、ということで判断したいですね。

音楽をするという目的のために筋肉を働かせるのに、筋肉を働かせることで音楽を邪魔してしまっては本末転倒ですからね。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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