ここぞ!という大事な場面で「何かしなきゃ!」「ちゃんとやらなきゃ!」と思ってついつい身体をこわばらせてはいないでしょうか。
演奏中に張り切って行ってしまいがちな無駄な動作の代表が、ブレスのときの力み。
ブレスのためにお腹付近で何か頑張るのは、結局要らない力みを生むだけでブレスの邪魔にしかなりません。
また、吹き込む時にもお腹をカチカチに固めてしまったら必要な繊細なコントロールができなくなってしまいます。
お腹はいつも柔らかく、発音や音色の操作のために繊細なコントロールをする余地を持っておく必要があります。
固まってしまっていたら大雑把な動きしか起こせませんからね。
わたしも以前はその要らないことを色々やっていましたが、多くの人がついお腹を固めて頑張ってしまうのはなぜなのでしょうか。
そのよくある理由が「頑張っている感じがするから」というもの。
人間の身体には働いていることを感じられる筋肉とそうでない筋肉があります。
心臓の筋肉なんて毎瞬毎瞬頑張っている感じがしていたら疲れてしまいますよね。
具体的には身体の表面の浅いところにある筋肉は、比較的動いてるとか働いている感覚を感じられやすいもの。
反対に深いところにある筋肉は、すごく働いてはいてもそれを感覚として知ることはほとんどできないそう。
なぜでしょうね?
わかりませんが生命体としてより重要な外部からの刺激に集中するためかもしれないし、内臓などの動きにいちいち気がついていたら脳がパニックになるのかもしれません。
それはともかく。
頑張っている感覚があまりないからと言って、必要な筋肉が働いていないとは限らないということです。
深層にある効率的に息を吹き込むための筋肉は、ちゃんと働いていたとしてもそれを感じられるわけではないのですから。
疲れないから頑張りが足りないなどというものではありません。
また、筋肉が疲れると働いた感がありますが、本当に必要な必要な働きをしたのかどうかは別問題。
もしかしたら演奏には必要ないことを頑張って疲れてしまっただけかもしれません。
息を吐くために働ける筋肉のほとんどは、あまり動きを感じられないそうです。
さらに腹直筋という一番表面にあって、深層の筋肉を邪魔しないため最後に働いて欲しい筋肉が、一番働いている感を脳に返して来るそう。
働いている感を得られるからといってこの腹直筋を最初に固めてしまうと・・・他の動きが不自由になって困ります。
わたしたち演奏者は頑張っている感を得たいのではなく、音楽のために効率的に吹き込みたいわけですから。
では何を判断基準に考えたらいいかというと、もちろん出ている音です。
頑張ってる感じのする筋肉で要らない力みをしていると、鳴りが悪くなり音質も固く鋭くなりがちです。
そういう音を出したい場面ではもちろんそれをするのはテクニックのひとつですが、無意識に常に必要なことではありません。
また、本当にやりたいことが効率的にできているとき、「何もしていない感じがする」とはよくいわれます。
筋肉が疲れたかどうかより出た音がどうなってるか、ということで判断したいですね。
音楽をするという目的のために筋肉を働かせるのに、筋肉を働かせることで音楽を邪魔してしまっては本末転倒ですからね。