音楽をするのに困ってることは特にないし自分には何でもできる!
わたしがそんな風に感じていたのは大学に入りたての頃でした。
それから時が経ち、勉強を進めるにつれ「まだ出来ないことがたくさんだな」と感じるようになっていきました。
何でもできる気がするなんてとんだ思い上がりだったな・・・と20年以上経った今になると思います。
やっと音大に入ってスタートラインに立っただけの段階で、一体なぜそんな万能感を持つことが出来たのでしょうか。
自分では、その後で必要だと思い知ることになるあれこれの存在にまだ気付いてなかった、というのが大きいと感じています。
入学当時21才。体力も時間もあるし、とにかく吹くことが楽しい!
そんな状態で演奏していたので、どうやって周りと合わせるか、音楽的によりよいものを求めて行くためにどうやって作品と向き合うか、など全然考えていませんでした。
知らないことがあるのを知らないという状態、ダニングクルーガー効果でいう馬鹿の山のところ、絶望の谷に落ちる寸前にいたのです。
自分に欠けているものが見えていないから何も欠けていないような気がしている。
そういう認識って学びが進んで色々とスキルが身についてくるにつれ「まだまだわからないこと知らないことばっかりだ」と反対になってくるのですよね。
ソクラテスの言葉では「無知の知」(無知であることに気づく)と言われる状態。
知らないことがあるのを知っている、出来ないことがあるのがわかっている、それって大事なことですね。
まだ先に続いている道が見えないってことは視野が相当狭くなっているということでしょう。
「出来ないことはなくなった!」そんな気がしたときこそ、実は見えてないことだらけかもしれないという気持ちを忘れないでおきたいものですね。