いつもより高音のサイズも小さい特殊管楽器を演奏するとき、普段どおり吹いているつもりでもちょっと鳴りにくかったり音にツヤやハリがないなんてことはありませんか?
「楽器が小さいならいつもより少ない息で鳴るはずだし、音も高いから突き抜けないよう気をつけなきゃいけない!」と思うかもしれません。
でもそれは、小さい楽器を見くびっているのかもしれません。
小さい楽器はいつもの楽器に比べて簡単なオモチャではないのです。
実際はよりシビアな音程感覚とコントロールスキルが必要な暴れ馬なのですよ。
楽器がダメなわけじゃない
あまり使われてなくて鳴らされ慣れていない楽器は、あなたがいつも通り吹いたからって飼いならされたいつもの楽器と同じようには鳴りません。
楽器が鳴りやすい状態になるほど、充分に振動に慣らされているわけではないのですから。
技術のない乗り手が暴れ馬に気軽にまたがってみても、振り落とされたりして簡単に乗せてもらえないのと同じ。
鳴ってくれないのは楽器に相手にされていないからかもしれません。
プロ奏者がどんな楽器も鳴らせるのはなぜ?
暴れ馬楽器に相手にされたいなら、たくさん共振せずにはいられない、楽器が相手にせざるを得ない、と思うくらいしっかりと充分に吹き込んでみましょう。
それをやらずに「鳴らない楽器」と決めつけるのはもったいない!
振動は物理的な現象であり楽器も人間ではありませんが、物理現象である振動は起きる頻度が高いほど再振動するのも容易なもの。
いつも吹いている楽器は振動することに慣れていて、それはつまりあなたが吹いたときに反応することに慣れています。
誰も吹いていなかった楽器を初めましてで力ずくで鳴らすだけのパワーがある場合はともかく、基本的にはまず鳴り慣れている状態を作らなければなりません。
それが日々やっておきたい特殊管の練習の一つ。
ちなみにプロ奏者が中学高校など学校の備品として眠ってたような古い楽器をすぐ軽々と鳴らせるのは、力ずくで振動させるだけのパワーがあるから。
エスクラやピッコロなど特殊管をしっかり鳴らしたいのなら、ただ楽譜を追いかけるだけではなく、合奏までに楽器を鳴り慣れた状態にさせておくのも大切なことです。
疲れるほど吹かなきゃダメ?
この力ずくで暴れ馬を乗りこなすパワーを使うのは、もしかしたらすごく疲れるイメージがあるかもしれません。
でもこれは体力の問題ではなく、身体の使い方の効率の問題です。
実際プロ奏者にはガタイの良い大きな人ばかりではなく、線の細い小柄で華奢な人もたくさんいます。
そんな一見強そうではない人でも、身体の使い方次第でハイパワーの鳴りを実現する事は出来ています。
それなら体格とか体力の問題でないのは明らかでしょう。
また、管楽器だけでなくピアノだってヨボヨボの(失礼)小柄なおばあちゃん奏者が、元気な大柄な若者もびっっくりのとんでもない迫力で演奏することだってザラなのですから。
鳴らすために出来ること・不要なこと
もしもあなたが疲れるくらい吹き込んているのに鳴らないなら、それは単に疲れるためには充分なことをしているけれど、楽器が鳴るためには充分なことをしていないということ。
冷静に考えたらわたしたちは楽器が鳴るための動作をすればそれでいいはずなのに、疲れるための動作をセットでやって「頑張ってる感」を得ようとしがちです。
でもそれは自分が疲れるだけで誰も得をしません。
「鳴るかどうかは関係なく疲れたいしやった感がほしい」という人には良いかもしれませんが、わたしたち演奏者には「鳴らないのに疲れるやってる感」は不要です。
得てして吹き込みや楽器を鳴らすことを強力にサポートする筋肉は「やってる感」を感じにくい深層筋です。
また、深層筋を使っていると、見かけ上は軽々と吹いているように見えても、実はものすごくパワーを使っているということが起きるのです。
「やってる感じ」はどうでもよく、実際に鳴ることに繋がる動作は何か、練習するときには忘れないでいたいものですね。
どんな深層筋が演奏に使えるのか知りたい方は、アレクサンダーテクニークを一緒に体験してみましょう。