本番前の舞台袖、緊張してるしワクワクソワソワしてる。
そんなとき、「楽しく演奏してきます!」なんてつい口にしてはいませんか?
本番前につい言いがちな言葉ですが、実はパフォーマンスの質を落としてしまうこともある要注意ワードなのです。
どういうことでしょうか。
順番に見ていきましょう。
ノリが良くて雑な演奏
楽しく演奏するってつまり何をすることなのでしょうか。
演奏している本人がワクワクすること?
楽しい気分で演奏すること?
お客さんさんと一緒にハイテンションな時間を過ごすこと?
では。
これまでに楽しい気分で気持ちよく演奏したときに楽器のコントロール精度が落ちてリードミスをしたり音を外したりしませんでしたか?
楽譜に書いてありことを忠実に再現できていないと感じたことはありませんでしたか?
本番中には気付かなかったけれど終演後に仲間がミスしていたことを知った、なんて経験はありませんか?
もしも答えがYesなら、
楽しく演奏する=いい加減にノリでごまかす
になっているのかもしれません。
楽しさの勘違い
「だってお客さんを楽しませるには奏者が楽しまなくきゃ」
そんなの言い訳です。
厳しいようですが、演奏者がどんな気分になろうとお客さんには関係ありません。
オペラのピットで連日何公演も演奏しているオケや、毎日出演しているダンスホールの箱バンドなど、必ずしも楽団員がテンション上げ上げな状態でなくても感動する演奏やワクワクさせられる演奏は存在します。
奏者もお客さんも一緒に「楽しかった!」という時間を過ごせたら最高ですが、「楽しい」と奏者が感じていることが素晴らしいパフォーマンスの必須条件ではないのです。
感動的なオペラの最後に鳴り止まぬ拍手でカーテンコールが行われる中、ピット内では客席から見えないのをいいことに楽器をケースにしまい終えて即座に帰りの電車に向かおうとしている奏者だっています。
観に行った公演終わりの電車で楽器を背負った楽団員を見かけたことのある人は少なくないでしょう。
それでもオペラが感動的だったことには何の影響もありません。
奏者だってハイテンション爆発!ノリノリ!じゃなくても真剣に集中して、表現することを楽しんだのです。
楽しさの本質
「楽しく。楽しく。楽しく。」と唱えても楽しい気分にはなりません。
楽しくなるには何かきっかけが必要です。
ひとりで何にもしないでいて楽しいという人は、ちょっと変わってますね。
それでは演奏することで楽しい気分になるためには何が必要なのでしょう。
たとえば
・仲間とのアンサンブルによるコミュニケーションが上手く行くこと
・やりたいと思った表現ができること
・お客さんと作品の魅力を共有すること
他にも演奏において楽しいというのは色々な要素があります。
しかし何も工夫せずただぼんやり音を並べているだけでそれを手に入れることはできません。
何かしらアクションを起こした結果、演奏する楽しさがやってくるのですから。
本当に楽しく演奏するには
ではその楽しさを感じる要素を実現するために具体的に何をしたらいいのでしょうか。
アンサンブルが上手く機能するようにしたければリハーサルで丁寧に打ち合わせをしますよね。
やりたいと思ったことが自由にできるためにテクニック練習もするでしょう。
また作品の魅力をお客さんと共有したければその魅力だと思うことを演奏なり言葉なりで伝える必要があります。
「楽しさ」というのは形容詞であって、何かをした結果感じるもの。
なにもせずに楽しさが湧いてくるなんてことは期待せず、具体的に何をどうしたいのかというのを大切にしたいですね。
あなたが演奏することで楽しさを感じるのは何をしたときに起きますか?