シンプルな曲を演奏するとき、テンポを速くするのとゆっくりにするのはどちらが大変だと思いますか?
一見テンポが速い方が難しくて、ゆっくりの方が簡単そうに感じられるかもしれません。
でも。
ゆっくり間を取りながら、小さな揺らぎを入れながら演奏するには、作品やひとつひとつの音がどんな風に変化することを求めているかをわからないといけません。
緩んでいきたい場面なのか進んでいきたい場面なのか?
音量の変化や抑揚や音色はどんなものが合うのか?
会場内の響きはどんな風なのか?
聴いているお客さんの反応はどうか?
そんなことにもアンテナを張って、ものすごく頭を使わなければシンプルなものを魅力的に聴かせることはできません。
反対にテンポを上げてテクニックを見せつつカッコよく、というのはそんなに考えなくても練習さえすれば意外に簡単にできてしまいます。
だから音楽的に聴かせることができない場合に、ただ単純にゆっくりしてしまうと間が持たないからテンポを上げたくなるのです。
「ついついテンポが走ってしまう」というケースも、どれくらいの間を取るのが適切なのかを自分で判断できないから間を持たせるために速く進みたくなってしまうという面もあるのではないでしょうか。
そんな演奏だと聴いてる人には何が伝わるでしょう。
「楽しそう」「いい曲だな」という感想よりも「大変そう」「難しそう」と思われてしまってはちょっと残念ですね。
安易にテンポを上げてテクニックでごまかすのではなく、音楽そのものを演奏した方がずっとっずっと楽しいものですよ!