速くて複雑なパッセージに備えて「楽譜をよく見て、やるぞ!」と気合いを入れ音を出した途端に指がもつれてしまった!
そんなときは「あーも!何をやってるんだか!」と自己嫌悪になったりもするかもしれません。
ジストニアや怪我などの問題があるわけでなくても指の動きは身体の比較的末端での動きなので、軸に近いところの影響を受けてしまいます。
つまり腕や肩などので動きが悪くなっていると、その影響でより動きにくくなるということ。
例えば楽譜を覗き込むために楽器を身体に引きつけて腕を引き込んでいたり、
姿勢良く構えるために胸を張る動作をしたり、
そういう身体の軸での動きは、指回りにとっては不自由な状態になってしまいます。
そういわれてもピンとこなければ、試しに腕で楽器を引き寄せながら細かい音符を覗き込むように楽譜に近づきつつ吹く場合と、腕にも楽器にも充分なスペースがある状態で吹くのを比べてみるとよくわかります。
動きとしてはほんの些細な違いなのですが、吹き心地は結構変わるでしょう。
楽器の運指コントロールはとても繊細な動きですから、小さな動きの質の違いの積み重ねでパフォーマンスは大きく左右されてしまいます。
これは「どう楽譜を見るか」が指回りに影響している例ですが、こういう一見関わりのなさそうな演奏動作が関係しあっているということは他にも無数にあります。
わたしが初めてアレクサンダーテクニークのレッスンを受けたころ。「こんな一見どうということのないただのクセがこんなに音に影響してたなんて!」とよく驚いていました。
わたしたちは骨格や筋力だけでなくそれぞれ色々なクセや動きの特徴を持っていて、そういう要素が絡み合ってパフォーマンスの質を決定づけているのです。
教える機会のある方は自分のクセだけでなく、他人の動きのパターンや特性を知っておくのも大切です。
グループレッスンは自分の動きだけでなく他の受講者の動きを観察することからも学べるので興味深いものですよ!