初めて楽譜を渡されてから合奏に参加するまでに個人練でちゃんと吹けるようにさらっておかなければいけない。
でも「ちゃんと」ってどのくらい?具体的に何をしておけばいいの?
ということを今回は考えてみたいと思います。
合奏までにどこまで仕上げとくべき?
合奏までに個人練でちゃんと仕上げていくべきだと思ってはいても、その「ちゃんと」のレベルってどのくらいのイメージを持っていますか?
つっかえながら間違えながらも一通り吹いてみたのレベル?
一人で吹いているときに音を間違えないレベル?
周りの音が聴こえたときに惑わされないで吹けるレベル?
他のプレーヤーがどの部分でどんな動きをしているか知っているレベル?
分析はばっちりしたけど指がついていくかどうかはわからないレベル?
それとも他のプレーヤーの音を聴いて抑揚をコントロールできるレベル?
あなたは合奏までにどのレベルに到達していればいいと思って普段新曲の準備をしているでしょうか。
一人で練習しているときには完璧に出来たと思っても合奏に入ると聴こえがイメージと違ったり思わぬところでタメがあって「おっとっと・・!」となって混乱したりするかもしれません。
そんなことがあっても落ちて迷子になったりせず冷静に対応できるのが合奏の準備が出来ているという状態でしょう。
自分一人でテンポで吹けても合奏になって崩れるようでは意味がありません。
合奏になっても完璧に吹けるよう準備するのが譜読みというもの。
初めての合奏でいきなりインテンポ?!
クラリネット奏者である筆者は音大に入りたての頃、合奏の準備というのがよくわからずなんとなく音符を読むことができるという程度の準備しかせずにオーケストラの授業に出たり合奏団体のリハーサルに参加したことがありました。
それまでに在籍していた学校吹奏楽や大学サークルのオーケストラなど何ヶ月もかけて一曲を仕上げるアマチュア団体のノリでいたのです。
音大の授業やプロ奏者がメインの合奏団体では初めて集まった時から当然いきなりインテンポ。
まずそれにびっくりして落ちて迷子になったのをよく覚えています。
曲のどこでテンポが緩む可能性があるのか、
どこで前向きになるかもしれないのか、
どこでフライングで飛び出さないよう注意する必要があるのか、
どんな雰囲気で吹き始める場面なのか、
それは合奏に出てからいちいち指揮者に流れを止めて指図してもらうつもりでいたので自分で予習しなかったのです。
今の私が当時の自分の隣の席で吹いていたとしたら「無神経すぎる・・」ときっと呆れるでしょう。
何も言われなかったけれど一緒のオケに乗っていた先輩などにはきっと迷惑をかけたと思います。
周りのちょっとした気配で「あ、こっちね」と迷わずついて行けるようにどの部分でどんなことが起こる可能性があるのか知って心構えをしておくのが「さらう」ということ。
音符を見たことある、音源は一回聴いた、という準備では話になりませんでした。
参加している団体や場面によって求められることに違いはあれどよく言われる「最低限の準備」というはどこまでのことを指しているのか整理してみると合奏に臨むまでの心構えに違いが出てくるかもしれませんね。
さらうって何をすること?
ここからは「さらう」「譜読みする」ということとしてやっておきたいことをもう少し詳しく考えてみましょう。
まず音符がインテンポで読めて問題なく音を並べられるというのはできて当たり前のこと。
それより一歩先に進むなら一緒に出る楽器や自分と絡む動きのパートがどこなのかも把握しておきたいものです。
それはもういちいち楽譜にメモしてわかるようにしておくのがおすすめ。
6時間あるオペラの楽譜で出入りが一緒のパートとその動きをすべて覚えていられるほど記憶力が良くなければ、そうするといいでしょう。
スタンダードなシンフォニーや組曲などなら慣れているので敢えて楽譜にメモしなくても覚えていることもあるかもしれませんが、基本的に自分の記憶だけに頼るのはギャンブルと言うこともできます。
最初からどのパートが何を一緒にやっているのかをわかっていれば、最初からアンサンブルがやりやすく思わぬユニゾンや交互に埋め合う動きに驚いたりもしないですみます。
音源を使った譜読みで気をつけたいこと
誰かの演奏した音源があってそれを聴くのであれば自分が他のパートと絡んだ時にどんな響きになるのかイメージしたり全体を俯瞰して見るのに役立てられるかもしれません。
ただし音源を聴くだけで「一緒のパートは何の楽器が聞こえるかな?誰を頼りにしたらいいかな?」と調べていくと実際に合奏になったときに聴こえ方が全く違って混乱するので注意しておきましょう。
当然ですが合奏の記録として世の中に出ている音源はオーケストラ全体をバランスよく聴くことのできる位置で録音しているもの。
それに対してあなたが合奏中に座っているのは誰の隣ですか?
隣のファゴットの音は合奏全体を聴けるように録音されたものよりきっと大きく感じられるでしょう。
逆にCDでイメージしていたのよりずっと小さく感じられる音もあるかもしれません。
座る位置によって誰が隣なのか遠いのかによって聴こえ方は全く違います。
そして実際の合奏では音源で偶然聴き逃したパートがとても重要な動きをしていたり、ソルフェージュ能力が高くないと「ん?これは何の楽器で何をしてる?」と思って何度も繰り返し巻き戻して聴いてみるけれどわからないということが起きたりということも。
そう考えるとやはり最初からスコアを手元で見ながら自分のパートが何の役割をしているのか把握しておくのが手っ取り早くて正確なもの。
いちいちスコアと見比べるなんてめんどくさいと思うかもしれませんが結果的にそれが一番少ない手間で「さらう」「譜読みする」を完了できる方法なのです。
パート譜だけで譜読みしようなんてソルフェージュ能力に自信があって作品自体もよく知っている場合だけにしておきたいものですね。