アレクサンダー・テクニーク 思考と心 練習 身体の仕組み

重い楽器を無理なく構える方法

楽器の重さに悩んでストラップを使ったり、姿勢と構えを工夫したりしている方は多いでしょう。

今回は人体の構造と使い方の視点から、無理なく楽器の重さを支えて快適に演奏する方法を考えてみましょう。

昔は重かった楽器も今は軽くないですか?

ピアノを習い始めた小さな子供が目いっぱい手を広げて片手でオクターブを弾く。かわいいですよね。

そんな子供がやがて大きくなった時、小さな頃にやっていたのと同じように手を目一杯広げてピアノを弾けばオクターブ以上に届いてしまってミスタッチになります。

だから当然、大きくなるにつれてオクターブに対する手の広げ加減を調整していくわけです。

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こういうことは管楽器の構えや奏法にもあるのに、視覚的に認識しにくいために成長に合わせての微調整は意外と見落とされがち。

体格がまだしっかりしていない小中学生の頃に楽器が重く感じて必死で身体のあちこちを固めて構えていたときの動作を、軽々と楽器を持ち上げられる大人になってからもやっていたり、マウスピースを噛む力やキーを抑える指も、過去の経験の延長でついやりすぎてしまっていることに気が付かなかったり。

若いうちはそれでも何とかなっていたとしても、筋力が落ちて効率を考えなければならない年代になってもそれを続けていると、当然ながら痛みや疲労などトラブルが出てくるのは自然なこと。

キーの押さえ方がおかしかったり構え方に不自然さがあるような場合には、今の現実の自分のサイズ・体力と自己認識がずれてしまっているということも考えられます。

そういう時に「楽器を始めたのは何歳のときだったかな?」と振り返ってみると身体のサイズや体力と楽器の関係が合っていないことに気付くことも。

奏法に何か問題がある時は、単純に扱いに慣れていないというだけでなく昔からの思い込みなど思考が関係していることはとてもよくあるのです。

普段は演奏中にそんなことはわざわざ思い出さないでしょうがたまには気にしてみるのもいいかもしれませんね!

 

楽器を持ったときの姿勢のバランス

構えや姿勢を考える時、身体のバランスには当然ながら個人差があります。

また楽器の違いや演奏形態の違いのみならず、楽譜にかじりつきたい初見の時と暗譜の時、指揮者を見てる時と隣のトップ奏者を見てる時など、それぞれ状況が違っていて、それぞれやりたいことに対してのバランスがあります。

その上で共通するのは、普通に手ぶらで立った時と楽器を持って立った時はバランスが違うということ。

考えてみると当たり前のようですが、普段荷物を持って歩いている時も手ぶらの時と身体のバランスは全然違うでしょう。

何も持たずに立った時に快適なバランスは、楽器を持って演奏するときには全然快適ではないバランスになることもあるわけです。

重い楽器を首からぶら下げている時は、姿勢維持するため何も持っていない時よりも後ろに重心を移すでしょう。

テューバのような大きな楽器でなければ大した重さじゃないと思ってはいても、ほんの500g程度でも意外に楽器の重さや大きさは支える身体に対して影響のあるものです。

こういうことも一概に身体の角度など見た目上のことで「良い姿勢」というのが定義できない理由の一つ。

楽器を含めた自分の重さ、楽器の重さを含めた前後左右の快適な傾き具合、「良いとされる姿勢」にとらわれず探してみたいものですね。

 

楽器の重さを支える場所

楽器を持ったときに重さを支えてくれるのは骨と筋肉のどちらだと思いますか?

正解は、です。

重さを支えるというと筋肉で頑張って・・というイメージがあるかもしれませんが、構造物としてバランスが取れたら骨はそれ自体の形によって重さを支えます。(ポッキリ折れたりしない限り)

もちろん人間の骨格はたくさんの関節があって動くものですから放っておけばぐらぐらしますが、それを常にバランスよく微細に調整するのは筋肉のお仕事。

「筋肉だけで重さを支えよう!」と思っていると筋肉は常に収縮し続けていなければならないので結構大変ですが、骨の構造による支えに頼ることができたらほんの少しのバランス調整だけで同じことができるもの。

大きくて重い楽器はもちろん、フルートやクラリネットなど小さい楽器も身体の軸(ここでは脊椎のこと)から離して持つほど骨の構造による支えではなく筋力で持ち上げることになります。

必要以上にひじを開いていたり高い位置で構えたりすると何だかプルプルしてくるのは、そのための筋肉がずっと頑張っているからというわけ。

「できるだけ身体に楽器を引き付けておく!」なんてことは必要ありませんが、少ない筋力で構えておけるなら、その方が響き(振動)をジャマせず有利なはずですよね。

また、無理のない一番ラクな姿勢や構え方というのは体調や持ち替え楽器の重さの違いなどその時々で変わるものですから、「いつもどんな楽器でもこの姿勢で構えなければ!」なんて決めつけずにその都度「一番無理のない姿勢はどこかな?」と考えてみるのも良いアイデアかもしれませんよ!

 

それでも楽器が重いとき

筋力ではなく骨の構造として楽器を支える方がいい、そうはいっても「やっぱり何だか重く感じる」という瞬間もあるかもしれません。

重く感じてるときは指回りもあまりではないし、とにかく疲れる。

これはクラリネットのような右親指で支えるタイプの楽器だと特に感じることかもしれません。

では。

楽器を支える筋肉って主にどれなのでしょうか。

直接楽器に触れている指や手はもちろんですよね。

その他に、上腕二頭筋や大胸筋を通して背骨や肋骨が積み上がった構造物として重さを支えているとしたら。

腕の筋肉が楽器の構えのために働けるのは不思議はありませんが大胸筋も腕に関わる筋肉です。

そして軸に近くて大きな筋肉は指先など末端に比べるとパワフル。

重さを支えるという動きはとても力をたくさん使う作業です。

さらに指先は軽やかな運指のために自由でいたいところ。

指先でそれぞれ反対の仕事を同時にやっていては重さの支えも指回りも、どちらも不自由で当たり前。

重さを支える仕事はそれが得意な場所に任せてしまう、それだけで構えも運指もずいぶん楽になったりするものですよ。

 

吹き込みの重さは腕じゃサポートできない

最後におまけとしてひとつ。

わたしたち管楽器奏者は吹き込みにパワーが必要なことを「重い」と言う表現をします。

管楽器奏者には当たり前な言葉ですが、「重い」というと荷物など重量が重いことを連想するのではないでしょうか。

重量的に重いことと吹き込みが重いことへの対応する筋肉の違い、それが混同されていなければ別に「重い」と表現しても問題は何もありません。

どういうことかというと、「吹き込みが重いな」と思った時に無意識で腕など重量を支える部分でなんとかしようとしてしまうことがあるから。

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楽器の抵抗という重さに対して働き掛けられるのは、空気を肺から押し出すための腹筋群。

これを使わずに助けにはならない肩や腕でがんばってしまい「雨でリードが重いから肩が凝った…」なんていう謎なことが起こります。

使える筋肉を使わず、効果の出ない筋肉でがんばって疲れる、そんなのもったいないですね。

また、吹き込みをサポートしようとしてノドや首のあたりで頑張ってしまうのもよく見かけますが、ノドは吹き込むためのパワーを生み出すことはできません。

空気を肺から出す働きについてノドでサポートできるのは「邪魔をしないこと」だけ。

なぜならノドから空気を押し出す働きをする筋肉が人体には存在しないからです。

「重い」という言葉から連想して関係ない努力をしてしまって上手くいってない、というケースは新しい仕掛けに変えたときなどに特に起きがちなので注意しておきたいポイントですね。

 

まとめ

楽器の「重さ」について見てきましたが、実際に身体の使い方を変えることで助けになるトピックもあれば、本当の原因は構造や仕組みの勘違いや思い込みで思考の整理が役に立つトピックもありました。

今回の重さに限らず、わたしたちは至る所でそういう自分の身体とその使い方について勘違いをしているもの。

トレーニングなどだけではなく本来の構造と無理のない使い方を選ぶための知識を持つということは、楽器演奏にとても役立つものです。

解剖学や心理学だけではない、楽器演奏に特化した実践的な使い方を学びたい方にはアレクサンダーテクニークがおすすめです。

ぜひ一度体験して見てくださいね。

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 BODYCHANCE認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。

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