一言で「緊張していない」と言っても緊張していない状態にも色々あるもの。
緊張を避けようとするあまり単に緊張感がない演奏になってしまっては魅力激減で本末転倒です。
今回は緊張していない状態について考えてみましょう。
緊張しないのは余裕があるから?
本番中に干してきた洗濯物が雨にあってないか心配になったり打ち上げのことを気にしたり、突然演奏に関係ないことが頭に浮かんでくる瞬間ってないでしょうか。
そんな違うことを考えてしまう時、「緊張してないし自分余裕だな」などと思うかもしれません。
確かに緊張してパニックになったりやたらテンポが走ったり指が絡んでしまったり、という余裕のなさとは違うでしょう。
とはいっても、そういう状態のときっていわゆる「熱演」にはなりにくいもの。
奏者の心にいくら余裕があっても、演奏に魅力がなければ無意味です。
それでは何のために心に余裕を持ちたいのか意味がわかりませんよね。
違うことを考えてしまう理由
実はこの思考がよそへ行ってしまう現象は、余裕があるから起きるのではなく「演奏に集中する」というスキルが低いから起きることも多いのです。
もちろんお客さんの反応を見てMCを変えたり、会場の残響によって語尾の処理を工夫したりというように、自分の楽器コントロールだけに夢中にならずに周りを見渡すことも必要です。
でも目の前の演奏に関係ない夕ご飯のメニューやら打ち上げ会場へのアクセスやらそんなことが気になるなら、それは残響をモニタリングして語尾の処理を工夫しようという意図のある思考ではなく、ただ単に思考を選べていない状態。
決して余裕がある状態ではありません。
作品の魅力が存分に伝わってくる魅力的な演奏をする奏者は、演奏中に考えることも自分できちんと選んでいます。
夕飯のメニューが気になったとしても、たった今吹いているソナタのどこがどう面白いのかに集中するという思考の選択が出来るのです。
もしも本番中に夕飯のメニューが気になって仕方ないとしたら、そういう思考の選択をする訓練ができていないということ。
そして思考の選択は練習次第で誰にでも出来るものなのです。
思考が乱れる影響
演奏中に関係のない思考が浮かんできてしまって集中できないと、
・練習でミスしたことのない簡単な場所で間違える
・大事な部分で入り損ねる
・ニュアンスや表現の緻密さが減って雑な演奏になる
というような影響が現れます。
「今日は調子いい!余裕だなー」と思った途端に間違える。
集中力を欠いた演奏はそんなことを引き起こしますし、そもそも作品の魅力を伝えたり情熱的な演奏をすることは出来ません。
もしも演奏中に全然関係ないことが頭に浮かんできてしまったら、今思い浮かべていたいことは何かを改めて選択してみても良いかもしれませんね。
集中するためには
ではどうしたら思考を自分で選べるようになるのでしょうか。
わたしたちに出来ることは二つあります。
それは
1、常に何を考えるかを選んでいるのは自分自身だと知る
2、今考えたいことと違うことが頭に浮かんできたら、改めて考えたいことを思い出す
ということ。
1の「常に何を考えるかを選んでいるのは自分自身だと知る」はこの記事を読んだ時点でクリアしていますよね。
「思考はコントロールできない」と思っていれば一生コントロールできません。
でも自分でコントロール出来ると知っていれば、そのために何かしらの努力ができるでしょう。
そして次に2の「今考えたいことと違うことが頭に浮かんできたら考えたいことを思い出す」。
これは習慣になるまで繰り返しトライを続けることで、本番のような咄嗟の場面でも思考がコントロール出来るようになっていきます。
わたしたち楽器奏者は指の練習はするのに、思考のトレーニングをしないなんて変ですよね。
身体の動きは思考が司っていますから、思考をコントロールできなければ身体の動きだってコントロールできません。
微細なレベルで演奏のクオリティが上がらなくて悩んでいるなら、思考のコントロールをブラッシュアップするのもおすすめですよ。