ウィーンフィルの音を出すのが簡単なわけがない!そう思うでしょうか。
最近では電子楽器の音や打ち込みのための音素材で、生の楽器の音を録音したものも使われています。
その中のひとつに「ウィーンフィルの音」という音素材があります。
一音一音ウィーンフィルの弦楽合奏の音をサンプリングして作られた音の素材です。
例えばこのサンプリングされた音で自作の曲をパソコンで鳴らしたら、それはウィーンフィルの演奏なのでしょうか。
もちろんそんなわけありません。
ウィーンフィルの楽団員がそれぞれ楽譜を読んでどう作品を表現したいか考えた結果の演奏ではないのですから。
「ウィーンフィルの音」というと豪華な感じがするかもしれませんが、結局はサンプリングされたただの音の羅列です。
もちろん手軽に有名オーケストラの音が使えるのは便利なことであり、決して悪いことではありません。
でも「ウィーンフィルの音」と「ウィーンフィルの演奏」は全く別物だということは知っておきましょう。
また、生で楽器演奏をする人も実は似たような思考に陥っているケースもあるのです。
たとえば「このフレーズではどんな音を出したいですか?」と尋ねた時に、それがどんなニュアンスのフレーズだろうと「キレイな音を出したいです」と答えてしまう場合。
そのフレーズがどんな場面でどんな役割りでどんな表情なのかを一切無視して「キレイな音」だけを求めるなら、それこそ人間が生身で演奏するよりサンプリングして加工された音の方がキレイかもしれません。
わたしたちが生演奏を聴いて本当にキレイだなと感動するのは、どんな前後の繋がりで奏者が何を伝えたいかがよく見えるときなのではないでしょうか。
たくさん練習して良い音が出せるようになるのは良いことですが、何の脈絡もなく唐突にただ一音だけ極上の音が出せたからってそれだけでは音楽にはなりません。
何のためにどんな音が出したいか、安易に「キレイな音」に逃げずに考えていきたいことですね。