練習していて気乗りがするときとあまり気乗りしないときで演奏の質が全く変わってしまう、そんなことはないでしょうか。
わたしは学生のときはよくそういうことがあって「気分によって演奏にムラがありすぎる」と先生に呆れられた覚えがあります。
なぜそんなことが起きたかというと、どこがどんな風に盛り上がるかまた落ち着くかなどの理論面を全くわかっておらず、その時その場の気分任せで歌い回していたから。
楽譜から読み取れるはずの「ここはこんな風に」という情報を全く受け取っていなかったのです。
たまたまそのときの気分が作品の求める表情や表現と近かったら良い演奏が出来て、そうじゃなかったらダメになる、そんなのはお風呂で歌う気分次第の鼻歌みたいなもので練習でも演奏でもありません。
自分で思い返してしょうもない学生だったなと感じます。
「こんな風に吹いたら作品がどんな見え方になるかな?」とか「今日は昨日とは違う解釈が出てきたから試してみよう」というのは、作品に向き合った試行錯誤だと言えるでしょう。
そういう風に楽譜からの情報を受け取るためには、どこが落ち着いてどこが盛り上がるかなどの理論を知ってることが絶対に必要です。
自分の気分しか裏付けのない鼻歌みたいな歌いまわしを自信を持ってステージで披露するなんて難しいのは当たり前。
わたしが学生のときに師匠は「ここはそうやって歌いたいの?」と何度何度も尋ねてくださっていました。
「ここはこうやりたいとはっきり思えるくらい楽譜をちゃんと読んでいるのか」という意味だったのかなと今になって思い出します。
これを読んでいるあなたは自信を持って「ここはこうやりたい」と言える演奏をしていますか?