長年演奏について悩んでいたことが解決すると「若い時に知っていればよかった」と感じるかもしれません。
確かに若いときほど物覚えがよく年を重ねるほど学びに関しては不利になるような気もしますが、果たして本当に若者より学びの効率は悪いのでしょうか。
実はそれは逆なのかもしれません。
もくじ
10代や20代がピークではない
学ぶというとイメージとしては受験とか仕事のためのトレーニングなどが頭に浮かぶかもしれません。
受験といえば睡眠を削って深夜まで机でカリカリやる、やたら長時間練習するなど、とにかく体力任せに何かするイメージを持ってしまいがちでしょう。
でも人間の体力のピークは15才前後だけれども、脳の力のピークは実は40代から70代なのだとか。
これは記憶力などの話ではなく、それまでの経験を活かして物事の判断や決断をする力のことだそう。
考えてみると若い頃にはものすごく迷ったり不安だったり判断に悩んだりしたあれこれは、もう若くもない今となっては悩む余地などない即決できる案件に見えたりするものです。
この道を選ぶとゴールに近づく、でもあの道を選んだら変なところに迷いこんでしまう、そういう見通しをある程度立てることができるのはたくさんの失敗をした経験があるからこそでしょう。
自分の能力を把握している
そして自分の能力についてもそれなりに知っているというのも強みのひとつ。
だから簡単に出来そうなことで無駄にウジウジと躊躇わないし、今の自分に出来ないと思うことは取り組む前にきちんと情報収集します。
若いときには出来なかった的確な選択を出来るようになった、それはこれまでの積み重ねがあるからこそです。
人生は有限だと知っている
それからもう一つ、人生は無限に広がっていてこれから何者にでもなれるし時間はたくさんあると思っている若者とは違い、身近な人との別れも経験してきた大人奏者は演奏を楽しめる時間が無限ではないことを知っています。
自由に動けて好きなことができる残された時間がどれだけ貴重かわかっているからこそ、その時々で大切にしたいことの優先順位をつけることができます。
だから音楽が出来ない時間も自分にとって大切な人やことに向き合うための、人生に必要な時間なので決してムダではないと理解しています。
そしてこれからの演奏できる限られた貴重な時間をどう過ごすのかを、若者のように親や先生など誰か他人の意見に惑わされることなく、自分で選ぶことができるのも強みでしょう。
こんな風に若い頃にはできなかった質の高い時間を過ごすことができるのは、大人の特権かもしれません。
たくさんの演奏を経験してきてソルフェージュや楽典が必要だと実感しているから学びが深まる、ということだけではありません。
今だからこそ感じている、その学びたい気持ちに従ってみるのも良いかもしれませんね。
うまく行かない経験も大切
若者にはない能力を大人奏者はたくさん持っていますが、若い時にがむしゃらに学ぶこともやはり意味があります。
色々な経験を積んだからこそ決断が速くなったり選択が的確になったりしていますが、これはやはりわたしたちが昔たくさんのダメな選択をしてきて痛い目を見てきたからこそでもありますよね。
何の経験も教訓もなしに常に最適解にたどり着くことは不可能です。
上手く行かないことも含めて経験するというのは、まず一つ大切な学びの要素です。
信じる力を無くしていませんか?
そしてもう一つ《努力しても上手くいくかどうかわからないものを信じてやってみる力》これは大きなポイントです。
若いうちはとにかく先生を信じてがむしゃらに進んで行くことはさほど意識しなくても出来るかもしれませんが、大人になると疑うことを知るので何かを盲目的に信じることは難しくなってくることもあるでしょう。
だから始めは頑張ってみようと決意したことでも「この方法で本当に上手くいく?」「この先生で大丈夫?」などのモヤモヤが生まれることも。
それはムダな時間を過ごさず意味のあることに人生を使うために必要な視点ではありますが、自分が納得していない手順だったり効果をすぐに実感できなくても確実に近道になるようなことはやはりあるものです。
次のジャンプポイントにたどり着いたときに突然大きく進歩するはずの、一見上手く行っているようには見えない停滞期でやめたくなったり退屈してしまうケースは若者より大人に多いのです。
「もう無理」「ここまでしか出来ない」と決めつけない
また大人になると「どうせ自分はこんなもん」「ここまでは行けそうだけどその先は無理だろう」など、自分の能力に限界を決め込んでしまいがち。
そしてある程度までで諦める。
限界がどこだかわからない方がどこまでも伸びていくこともあります。
講師としての目からは、「もう少しでこの先に行けそう」というタイミングなのに手応えの無さに諦めてしまうケースが多々あり、実にもったいないと感じるものです。
大人だからこそ意識的に
進歩していく時の過程には同じことを繰り返しているような停滞を感じる期間が必ずあります。
それを抜けるとポーンと一つ二つ上のレベルに上がって、それっきりもう低いレベルには落ちてこなくなる、という経験をしたことがある大人は停滞期も踏ん張ることが出来ます。
・考える力
・的確な選択をする力
そういうものは大切ではありますが、
・無心に何かを信じてついていくこと
・自分で限界と感じるポイントで立ち止まらず進む
などについては、大人になる程より意識的になる必要があるかもしれませんね。