練習のときは問題なく息が続くのに、本番になるとブレスが持たなくなる。
それにはちゃんと理由があるのです。
ブレスを妨げてしまう原因は何なのか、一緒に見ていきましょう。
なぜ本番だけ息が持たなくなるのか
ブレスの仕方について考える時、横隔膜や肺やお腹についてはよく気をつけるでしょうが、姿勢についてはどうでしょうか。
誰にも見られていない練習のときと大勢のお客さんを前にしたとき、まったく同じモードでいる人はほとんどいないでしょう。
「見られている」という意識はわたしたちの姿勢を変えてしまうこともあるものです。
ひとりきりの練習ではどうでもいいラクな服を着て、どうでもいい姿勢でいることも問題なく出来たとしても、大ホールのステージに立てば自然に背筋が伸びたり礼儀正しい振る舞いを心がけたりしませんか?
そんなときはやはり窮屈で身動きが取りにくくなるものです。
では身動きが取りにくいとなぜブレスが不自由になるのでしょうか。
背筋を伸ばしたら吹きにくい
なぜ背筋をピンとしようとしたり「良い姿勢」でいるときに吹きにくいのかというと、そういうときには自然な状態では本来当たり前に起きているはずの背骨の動きが邪魔されてしまっていることが多いから。
人間の背骨は呼吸によってよりカーブしたり、l少しカーブが緩やかになって伸びたりしています。
それが起きているのが自然な呼吸をできているときです。
そして背筋ピン!のモードのときはその呼吸につれて動く背骨の動きが阻害されてしまいがち。
背骨が動きにくければ呼吸も不自由になります。
だからいつもの動けるモードなときのブレスで吸える空気の量と、人前で背筋ピンモードで吸える空気の量は変わってくるのは当たり前なのです。
身体は常に全体が連動しているので、姿勢を固定したままで横隔膜やお腹で何かしようとしてもそれは無茶というもの。
いつもは平気なのに本番の時だけブレスが持たなくなる問題、ありがちな理由の一つです。
姿勢を変えられない楽器
姿勢を固定せずに吹いた方が息が楽で音も良いのは明らかなので、それを知っていたら誰でも背骨が動ける状態で吹ききたいと思うでしょう。
楽器を持ち上げて演奏しているのなら、背骨や胴体の長さが自由に変えられブレスもコントロールできますが、バスクラリネットやバリトンサックスやバスサックスなどエンドピンがあるため地面から楽器の距離を変えることのできない楽器も存在します。
チューバや奏法によってはユーフォもマウスピースの高さを変えにくい印象があるでしょうか。
これらの楽器は一度高さを決めたらマウスピースの位置も演奏中には簡単に変えられないので、自分で持ち上げて吹ける楽器より不自由に感じるかもしれません。
とはいえそこは工夫次第。
やりようはいくらでもあります。
エンドピンがあっても快適に吹くには
もちろん自分が「背筋ピン」のモードで届く高さピッタリにしたらそれ以上はどうにも動けませんが、あらかじめほんの少しだけ低めにセットしておくことも出来るはず。
それによって演奏中に背骨の長さが変わる伸び縮み分を足首や膝や股関節の曲げ伸ばしで調整することができるのです。
つまり頭が動けないなら身体が反対方向に動くことでバランスは取れるということ。
背骨のことは背骨だけで解決しなくても、わたしたちの身体には無数の関節があるのですから。
座っていても調整できるもの
合奏やアンサンブルでは椅子に座っていて脚の関節があまり活用できないことも多くあるでしょうが、楽器や顔の角度調整によって背骨の長さ変化に対応することはやはり可能です。
人間は頭が動かせないなら他の部分でカバーすることが出来るのですから、「頭の位置が変えられないから仕方ない」と諦めたりせずに自分に合った吹きやすい奏法を探して行きたいものですね。