無意識にやっている音出し、ぼんやり進めている練習習慣が上達を阻んでいるとしたら、あなたは今の音出しや練習方法を続けますか?
今回は音出しや練習で大切にするべきポイントについてまとめてみました。
音出しの仕方
まずはやらないほうが良い音出しの仕方についてみていきましょう。
パラパラ音出しで下手になる
何も考えずとにかく吹きながら指をパラパラ動かしていたり、ひとつひとつの音がコントロールされていない暴力的な音出し、見かけたことはありませんか?
中高生にとても多いのですが、何の音を出すかもちゃんと考えず音を出すのはおすすめできません。
なぜかというと、きちんと一つ一つの音がコントロールされていない状態で出て来る音が当たり前になってしまうから。
楽器によって鳴りやすい音や反対に鳴りにくい音はあるでしょう。
それを吹き方でコントロールして、結果的に意図したバランスで鳴らせるよう習慣付けていくのが練習の作業です。
それなのに何のコントロールもしなければデコボコな音量音質で音は出て来るし、それを聴き慣れたら自分の音はそういうものだと思ってしまいます。
曲の中でもデコボコがあるのは当たり前に感じてしまい、そのデコボコがコントロールをすることで滑らかに出来るなんて思いもしなくなってしまうことも。
これを読んでいるあなたは下手であることがあたり前になりたいでしょうか?
そんなことを望む人はもちろんいないでしょう。
曲の中には何にも意図しない音は一音もありません。
ただの音出しだって目的がない音出しはあってはなりません。
音を出すための目的が無いなら、家でテレビでもみてる方が変な癖が付かない分ずっと良いでしょう。
音出しに意味が無いなら、合奏が始まるギリギリまでお菓子を食べていたって何も変わらないはずですよね。
意図を持って丁寧にする音出しは音をコントロールする習慣を作るだけでなく、自分の耳も良くしていく効果もあるもの。
あなたは普段の音出しのときにどんなことを意図していますか?
不安箇所の確認吹きの仕方
アマチュアの方のレッスン前、音出しついでに心配な箇所を実際に必要なテンポより速くコソッと試しに吹いてみるようなことがあります。
不安を解消したいという気持ちはよくわかるのですが、この試し吹きはあまり上手く機能することはなく、不安解消どころかさらなる不安の呼び水になってることが少なくありません。
不安な箇所を試しに吹いてみることが悪いのではありませんが、その試し吹きは一体何のためなのでしょう。
最後の練習なのかもしれないし、出来るかどうか試したいのかもしないし、無意識かもしれません。
実際に「今の音出しはどんな目的でしたか?」と尋ねてみると、「あまり深く考えていません」という回答がとても多いです。
心配なフレーズをレッスンや本番の前についつい確認のために吹きたくなる気持ちはとてもよく分かります。
とはいえそのフレーズが成功するための意図や手順も考えずに無意識的に音を出すのはあまりいいアイデアとは言えないのです。
なぜかというと、どうしたらうまくいくか考えないで音を出す習慣を強化しては本番でも同じことをしてしまいがちだから、というのがひとつ。
もう一つは上手くいかせるために何も意図しないというのは上手く行ってもそれは偶然であって再現性が無いから。
それにもし試し吹きで失敗したらそれが耳に残って本番でもそのイメージを引きずってしまいますよね。
さらに上手く行かなかった確認音出しのせいで焦って心に余裕がなくなってしまったり。
それでは確認してみたいときにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えのひとつは、口で音を言えて全部の音をやりたいように出来るゆっくりなスピードで吹くこと。
目的は音を確認することとそれをするための手順を確認することなので、本番で吹くインテンポでなくていいのです。
インテンポのときに考えたいことやしたい動きを思い直すためなら、それが出来ないような高速で吹けば混乱するのは自然なこと。
ちょっとだけ確認のために吹いてみたくなったとき、思い出してくださいね。
練習の仕方について
次に正しい練習方法について考えてみましょう。
出来るまで繰り返すのはやめましょう
出来たり出来なかったりするのが練習だと思ってはいないでしょうか。
練習というのは成功体験積み上げていくことや、それを行うときに何を意図するかという思考手順に慣れていく作業です。
《はじめはゆっくりのテンポからやりましょう》とは繰り返しお伝えしていますが、そのときに出来たり出来なかったりするということはそのテンポは自分にはまだ速すぎると思っていいでしょう。
音は絶対に間違えないしテクニック的にも余裕がある、そういうテンポが練習スタートのときに選びたいテンポです。
「運が良ければ成功する」なんていうのは練習ではなくギャンブルみたいなものですし、どういう意図で何をしたら成功するのかという確かな情報が得られないという意味で再現性がありません。
というと「やりながら身体で覚える」などの言う声もありそうですが、間違った音を出したらそれが良い悪いどう思っているかに関わらず脳は記憶していきます。
間違った動きも身体は覚えているのです。
出来た体験を積み重ねていくには、少しずつテンポを上げていくときにある程度のところで引っかかったり間違えたりすることが出てくるでしょう。
その引っ掛かりの原因を見つけて解決し、「もう絶対確実にできる!ゆっくりのときと同じように心にも余裕がある」と思うようになってから次のテンポにステップアップしましょう。
そうでなければそのテンポではまだ出来ていないということですからね。
ちゃんと出来てから次に進むという練習をしたら、「できた!」の積み重ねになって自信だけでなくそれを正しく行うための意図することや手順も身につけていくことが出来ます。
出来たり出来なかったりするのは、成功させるための意図を選んだり手順を踏むための時間が足りない、つまりテンポが速すぎるのが一因になっています。
その成功のための意図や手順がわからない場合は、情報不足なのでレッスンを受けたりできている人にやり方を尋ねたりする必要があるでしょう。
「出来るか出来ないかはともかくとにかく繰り返す!」なんて闇雲なことはクラリネット奏者である筆者も練習方法がわからない頃によくやっていましたが、はっきり言って時間のムダですから忙しい大人に向いた方法ではありません。
出来るまで繰り返すのではなく、出来た体験とその意図や手順を積み上げて行きましょう。
上手くなる人とならない人の違い
上手くなる人といつまでたっても変わらない人の練習の仕方にはどんな違いがあるのでしょうか。
たくさん違いはあるでしょうが、その中のひとつは「出来るようになるのを待てるかどうか」です。
練習でだんだんテンポを上げていくようなときに、小さな引っ掛かりを感じたところで
・原因は何か
・どうしたら解決出来るか
ということを考えるのは大切です。
引っかかりを解消するための意図や手順がわかったらそれを選択する習慣をつけるため繰り返しやってみます。
そうすると無意識でも、その引っかかっていたところを成功させる奏法を出来るようになるのです。
それから次のテンポに上げていきましょう。
小さな引っ掛かりを解決しないまま次に進んでいくと、テンポが上がって問題に対処する時間が短くなり、思考の選択スピードも必要になってきたある一定のところから突然上手く行かなくなります。
対処可能なほんの小さな引っ掛かりだったものは、放置して進めていくうちにいくら繰り返してもどうにも出来るようにならない障害になってしまっています。
きちんと出来るようになってから先に進む。
そのために出来るようになるための情報を集めたり実験したりするための時間を待つ、それが出来る人はどんどん上手くなっていきます。
あなたは練習のときに小さな引っ掛かりの解決をしていますか?
まとめ
練習や音出しを無意識にぼんやり行うことは百害あって一利なし。
どんなことを考えるかというのも大切な練習の要素です。
ぜひこれからはきちんと意図を持って練習し、爆速で上手くなっていきましょう!