変拍子の楽譜を見た時、つい苦手意識が湧いてきたり「あ、むり!」と思ってしまったりしないでしょうか。
今回はそんな変拍子に苦手意識を持っていたり、「どう演奏したらいいかわからない」という方のために演奏のコツを書いてみました。
楽譜を追うことさえできなかった変拍子の苦手時代
わたし(筆者:クラリネット奏者)はストラヴィンスキーのクラリネットのための三つの小品という超絶変拍子な無伴奏曲の楽譜を初めて見た大学一年生のとき、「あ、むりだ」と瞬間的に思いました。笑
その後、音源と照らし合わせながら楽譜を見てみるも全く追えず、吹かずに楽譜を見ているのに落ちるという新しい体験をしました。笑
それがある時から「変拍子、たーのしー!かっこいい!最高!」に変わって今に至ります。
何がキッカケだったのかというと、ある時リハーサルで合わせをしていたピアニストの先輩から「拍子のここを強調して演奏するといいよ」とアドバイスをもらった時。
学校だけでなくこれまで出会った全てのプレイヤーから何かしら学ばせていただいて今に至るなと改めてありがたく思います。
このせっかく苦労して集めた知識や手法、いつか何十年か後に神様にお返しする前にまとまったパッケージのまま出来るだけ多くの方に手渡して役立てていただきたいなー。
話が逸れましたがともかく変拍子には捉え方のコツがあるのです。
(変拍子に限らず全ての拍子に共通のことではありますが)
変拍子を演奏するコツ
変拍子をかっこよく演奏するコツとは、ずばり向かっていく拍(アナクルシス)と到達した拍(クルシス)を理解すること。
ズバリって言いながらすでに講座やレッスンで学んでいる方以外にはわかりにくかったでしょうか…。
拍子には次に向かう拍と向かった先の到達した拍というのが存在しています。
向かっていく部分は音量やスピード感や色んな方法でエネルギーを感じさせながら到達目標の拍まで進んでいくもの。
それが拍子の持つ音楽の抑揚のひとつ。
演奏も全部の音を均等に鳴らすよりやはりダイナミクス変化や音色変化など何かしらので手段で表現する方が拍子のもつ抑揚が聴いている人に伝わりやすいもの。
それをしていないとただのっぺりした演奏になってしまうし、「変拍子はワケがわからない」と思ってしまうのです。
では具体的に拍子のどこを強調するとかっこいい演奏になるのでしょうか。
小節線は区切りではない
まず前提として拍子は小節線の位置で見分けることができるでしょう。
この小節線こそが手がかりなのですが、小節線の意味を誤解している人がものすごく多いのです。
実はこの小節線というものは一小節の中の音の数を表すわけではなく小節線の直後の音こそがエネルギーが盛り上がって到達した音であることを表しています。
つまり小節線の直前は次に向かうエネルギーが高まっていっている最中。
そして小節線を越えた直後の音に到達してその後に弛緩する。
それが拍子のワンセットです。
小節の中の音が何個あるのかはどうでもいいのです。
小節ごとの単位では音楽は動いていないのですから。
変拍子はココを強調すると良い
拍子は次の小節線を越えた音に向かっていき小節頭の音に到達して弛緩する。
ということは変拍子をかっこよく演奏するためには小節頭の音を強調すると言うことになります。
ただしそれは「強拍だから」ではなく「到達した音だから」です。
小節頭が大切なんて言われなくてもわかっているでしょうが、「強拍だから」と思って強くする時と「ここに到達したから」と思って強調したときの演奏はまるで違います。
強拍というのは周りよりも強い拍というわけではなくて、その周囲にあるうねりの波の頂点になっている部分なのです。
強拍だからと思ってそこだけ強く演奏したりすればたちまち幼稚で意味のわかってない人の演奏になってしまいます。
拍という当たり前に知っていると思っていることをきちんと知るだけで音楽に命を宿らせることができるものなのですね。
講座やレッスンで取り上げる音楽理論は初心者向けのつまらない座学ではなくこういう演奏する時に知っておきたいのに学ぶ機会のなかったあれこれを知って音楽性を飛躍的に向上させる、そんな内容です。
ある程度吹けて調子に乗って、「楽典なんか知っている」「ソルフェージュは得意だよ」と思っている過去のわたしのようなプレーヤーのための内容なので、すでにベテラン奏者やプロ演奏家がたくさん学んでくださっていますよ。