以前「ザ・クラリネット」というクラリネット専門の雑誌にタンギングについての記事を書かせていただいた時にも少し触れましたが、「長くタンギングが続くフレーズでだんだん舌がもたついてくる」というお悩みをよく耳にします。
基本的なタンギングのやり方についてはこちらに書いているので読みたい方はどうぞ。
今回は速くてきれいなタンギングをするコツをいくつかご紹介します。
舌のもつれ解消は息で出来る
ゆっくりならできるけどテンポが速くなると舌が追いつかなくてもつれてきてしまう。
こういう場合は舌を動かすということに気を取られすぎて息の流れがおろそかになっているのが原因のひとつです。
たくさんの息が流れていて圧力が高ければ、舌の筋肉を使ってリードから離すだけではなく、息の流れ自体も舌を離す動きをサポートすることができます。
舌を引っ張ったり押し出したりを繰り返せばそれぞれの動きがすこしずつ重なりあっていつしかそれが同時に起き始めて「引っ張りながら押し出す」という矛盾した動作になることも。
そうなると疲れるし、もつれてくるもの。
でも息の圧力で舌がリードから離れるなら、二つの動作が拮抗してしまうことが起きにくくなるので、もつれにくくなります。
たまにテンポが速いフレーズの方がゆっくりなフレーズよりもタンギングがしやすいことがあるでしょう。
速いテンポだと勢いに乗って息を流し続けていられるけれど、テンポがゆっくりになると息のスピードも一緒に落ちてしまうということもありがち。
ここぞという時にはビビって息の圧力を弱めるのではなく思い切ってたくさん吹き込んでみるというのも一つのテクニックです。
アーティキュレーションが入り組んでいるとき
発音する時に必ずタンギングをしてしまう習慣の方は意外にたくさん見かけます。
基本的なことですが、舌は音を出すために触れるのではありません。
管楽器で音が出るためには息が流れている必要があって、舌は息の流れのコントロールを手伝うものです。
意外かもしれませんが、タンギングを上手くいかせるためのポイントは実は舌ではなく息にあります。
タンギングは舌で振動を止めて、それから息の圧力でまた振動を再開させて、という作業の繰り返し。
レガートなら振動は止まらないので同じ息の圧力のままでも音は鳴っていますが、一度止まった振動を再開させるのには相応のエネルギーが必要です。
そのエネルギーになるのは舌を離す勢いやアンブシュアの締め付けではなく、息の圧力だけ。
だから舌をつくときにはレガートのときよりもたくさん息の圧力をかけることがポイントです。
また逆にそうしないと曲の中でスラーとスタッカートが混在しているところでは、スラーよりもスタッカートの方が小さく聞こえてしまいます。
スタッカートのときはレガートのときよりも大きい音で吹こう!と思って息を入れると、ちょうどレガートのときと同じくらいの音量になるもの。
ぜひ試してみてくださいね。
ダブルタンギングの目的
冒頭で舌を離すのには息の圧力も使えるというお話をしましたが、それでも間に合わないような速いパッセージの場合はダブルタンギングになるでしょう。
速い=ダブルやトリプルのようなイメージがあるかもしれませんが、ダブルタンギングをする狙いはシラブルがずっと同じだと舌がもつれる原因になるので変化をつけるということです。
よくシングルタンギングはtututuやtatataと言われます。
そしてそれが追い付かないくらい速くなったらダブルタンギングでtakatakaやtukutukuにで吹くことが多いもの。
とはいえダブルタンギングは難しくてたくさんの練習が必要というイメージがあるかもしれません。
しかし実は、舌の動きに変化をつけることができるアイデアは子音のtとkだけではないのです。
ダブルタンギングの種類
子音は同じで母音だけ変えるtotatotaやtutatutaでも充分な変化になり得ます。
ダブルタンギングのkは舌の上顎に触れる位置がtとは全く違うので慣れるまでなかなか発音しにくいですが、totatotaの発音だとほとんどシングルタンギングと同じ位置で変化をつけられます。
試しに楽器を使わず言葉で言ってみましょう。
実際にtotatotatotaと繰り返し言ってみてtoの時の舌の触れる位置と動く方向、それとtaの時の舌の触れる位置と動く方向がどう違うのか観察してみてください。
舌の触れる位置はほとんど同じだけれど、動く方向が違うのがわかると思います。
同じ動作では動きの繰り返しよりも変化がある方がやはりもつれにくいもの。
シングルタンギングでより速くやりたい、と思った場合には試してみてくださいね。