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大人が「学ぶ」ために知っておきたいあれこれ

「たくさん学んできたしもう充分!」「自分の発想だけで何とかなる!」「昔出来たことだから今も出来るはず!」

そんな風に思ったときには、自分に足りないものが自分では見えていない状態です。

自分は変わらなくても世の中はものすごいスピードで変わっていきます。

必要とされるものも最新の情報も更新されていくので、インプットを行わないままではどんどん取り残されていくでしょう。

今回は知っておくと大人になってからの『学び』を助けるあれこれをご紹介していきます。

よし!やろう!と思わない

「新しいことにチャレンジしよう!」

「今年こそはこれをやろう!」

「そう思ったけれど気がついたらやらないまま時間が過ぎていた・・・」

ほとんどの大人はそんな経験があるでしょう。

人間は現状維持をしたがるのが普通だそうで、深層心理で本当に願っていないことにはやらない理由を見つけるのだとか。

忙しいとかお金がないとか子供が小さいとか、面倒なことを断る都合の良い口実です。

そんな言い訳が出てきたら「ああ、この人はこれを面倒くさいと思っているのか」という証拠かもしれません。

そして反対に、本当に願っていることはどんなに不利な状況だろうと実行できる手段をなんとか見つけ出すそう。

卵が20円値上がりしたから買うのを控えようと普段は節約しているのに、長年ずっと生で聴きたいと思っていたウィーンフィルが我が街に来るとなればS席が10万円だろうとボーナスを前借りしてでもチケットを取る。

気乗りのしないランチ会は子供が小さいからと断るのに、どうしても参加したいプロジェクトを振られたら、とにかく引き受けてから保育園やベニーシッターさんに「外せない用事が入ったから」と交渉する。

きっと心当たりありますよね。

新年に「今年こそがんばろう!」と思うってことは、取り掛かるために大きな決意が必要だということ。

大きな決意をして取り組んでいることは、習慣にしてしまわなければすぐに挫折します。

だって大きな決断を毎日はできませんし、「チャンス!」という気分になれるのも最初だけ。

だから習慣にすることが大切なのです。

何も考えずに「やるのが当たり前」の状況になってしまえば、今度は辞めることや休むことに決断が必要になります。

そうなったらしめたもの。

やるかやらないかに決断が必要だとやらなくなってしまいがちなので、習慣にして考えずに取り組める状況を作ってしまうのは案外有効です。

もちろんものすごく疲れていたり忙しくて時間が取れない・・・そんな日もあるでしょう。

そういうときは潔くお休みする方がいいでしょう。

でもデフォルトの習慣としては、やるかやらないか検討する機会を作らずとにかく着手するという習慣にするのは良い方法かもしれませんね。

 

腰を据えて学ばない方が良い

ソルフェージュや音楽理論は、演奏をする上で可能ならできるようになった方が良いもの。

とはいえ忙しかったり家族の都合があったりなど、なかなか着手できない方は多いでしょう。

わたしも英語なんかはずっと「いつかそのうち勉強しよう」と思ったまま何年も着手していません(笑)

これ、実のところ差し迫った必要がないからなのですよね。

この人と会話したいとか、この本を読みたいとか、そういう英語を使ってやりたいことがはっきりしていないのです。

音楽理論も何となくやった方が良さそうだとは思っていても、差し当たり他にやることが目の前にたくさんあれば目的のあやふやなことは後回しになってしまいがち。

とてもよくわかります。

そんな風に音楽理論やソルフェージュに改めて取り掛かるというのはハードルが高いとしたら、普段の練習の時にほんの少しだけ取り入れてみるのはどうでしょう。

例えばスケールを練習するときに音階という短いフレーズに簡単なストーリーをつけてみるとか、

アルペジオなら和音の色合いを味わいながら吹くとか、

音を声に出してインターバルの距離と意味を感じつつ読んでから吹いてみるという程度でも、

譜読みが早くなったり歌い方がクリアになったりするものです。

それでやりたいことがより効率的により深くできるとしたら、理論を腰を据えてやらなくても効果は充分でしょう。

面倒くさい机上の理論ではなく、やりたいように演奏するために日々の練習習慣に取り入れるワンポイントアイデアの方が役に立つかもしれません。

音楽理論はそもそもは実用のためのものですから、机に座って覚悟を決めて取り組む必要はないのかもしれませんね。

 

まだ本気出してないし

「やれば出来るけどやらないのは出来ないのと同じ」

これはわたしが学生のときに友人がよく口にしていて印象に残っている言葉です。

「やれば出来るはず!」

と自分を信じるのは大切なことです。

でも、やれば出来ると言いながらいつまで経ってもやらないのは、自分にそれが出来ないという事実に直面するのを恐れて避けている逃げでしかありません。

鋭い言葉ではありますが、全くその通りだと思います。

誰でも本気で取り組んだ挙句に上手くいかないという結果に直面するのはやっぱりイヤですよね。

ですが。

チャレンジして失敗したなら、自分が選んだやり方が有効ではないと知ることができます。

自分の能力がまだ足りないと気付いたなら、何を補う必要があるかも知ることができるでしょう。

「本気じゃなかったし」

「やれば出来るはずだし」

「他のことで忙しかっただけだし」

といってチャレンジしないでいれば、思い描いている方法が果たして本当に有効なのかどうか、自分の能力は目標に対してどんな状況なのか、それらを知ることは出来ません。

現状を知ることが出来なければ先へ進むことも出来ないので、いつまで経っても立ち位置は変わりませんよね。

どんなジャンルでも自分自身のダメなところをたくさん知っている人ほど、速く遠くまで行けるもの。

自分にウソをついて、つまらないプライドを守りながら、上手くなっていくことは出来ないのです。

本当に前に進みたいのなら、今の自分に足りないものを知るためにもまずはチャレンジしてみることが大切ですね。

 

遠くの目標にたどり着く唯一の方法

「信じられないほど遠くに見える目標の場所に自分自身を連れて行ってくれるのは毎日の小さな習慣以外にない」

これはある講座に参加したときに耳にして印象に残っている言葉です。

現代人は何かやろうと思ったときに、簡単にできる方法や効率の良い裏ワザなどを探すことが多いでしょう。

そして実際に着手して根気よく続ける、という一番大切で効果のあることを疎かにしてしまいがち。

たしかに効率の上がりやすい方法や無駄な苦労を省くテクニックなどは、この情報化時代どんな分野でも探せは出てくるでしょう。

しかし、それは歩きにくい道を出来るだけ快適に歩く方法でしかありません。

歩かないで済む方法ではないのです。

そもそも歩かない人は当たり前ながら先には進めません。

楽器の練習などはやればすぐに上達するような単純なものではありませんから、魔法でひとっ飛びする方法があるなら知りたいと思うのはよくわかります。

それでもコツコツと小さな一歩を積み重ねなければ、楽器や身体のコントロールだって音を聴くことだって楽譜を読み込むことだって出来るようにはなりませんよね。

日々の進歩は一見わからないくらいほんの少しだとしても、気付いたらすごいことが出来るようになっている。

それはひとっ飛びする魔法のやり方を見つけた人ではなくて、小さな一歩を積み上げ続けた人です。

改めて小さなことの継続を大切にしなくてはと思わされたのでした。

 

傲慢な下手くそ奏者と謙虚で上手な奏者

本当に上手な奏者は、さらに良くなるために学ぶ姿勢があります。

ですがそれだけだけではなく、ものすごく謙虚に人と接することをご存知でしょうか。

世界的な奏者の演奏を聴くだけでなく、サイン会などでお話する機会を持ったことのある方はピンとくるでしょう。

謙虚に学ぶ気持ちを持っていて、自分が出来ていないことや目標までの道のりがどれくらいなのか把握することができる。

だからからこそ普段から謙虚に努力するし、過去に自分が歩いてきた道だとわかるからこそ誰かに対して驕ったり偉ぶったりしないという姿勢になるのかもしれません。

そういう姿勢があるからこそ、その時々で必要な人と出会うことができたりなど、チャンスを手にして来きたのでしょう。

反対に自分に出来ていないことや目標までの道のりを正確に知ることができない段階では、「自分は出来ている」と思ってしまうのは無理もありません。

それ以上先に行った人を見たこともなければ、自分がもっと上達する可能性も知らない。

つまり自分が描けるビジョンの中では『今の自分が最高に良い状態』にあるのですから。

井の中の蛙は「充分すごい」と思ってしまいますよね。

もちろん誰もが世界的な奏者を目指す必要はないでしょう。

ですが音楽を追究していきたいと思うのであれば、どちらの姿勢で演奏したり周りと接していくのが本当に行きたい場所にたどり着ける可能性が大きいかは疑問の余地はないでしょう。

誰だって周りを見下した傲慢な人にチャンスをあげたいとは思わないし、そんな人が学びたいと思っても教えてあげようという気持ちにはなりませんものね。

わたしも学生のときは校内で王様のようにしていたけれど、外で仕事をするようになったら人が変わったように謙虚になった年の近い奏者はたくさん知っています。

もしかしたらわたし自身も傲慢で調子に乗っていたかもしれません。

でも今も演奏やレッスン活動を続けている仲間の中には、そんな傲慢で偉そうな人は一人も見当たりません。

人は変わり続けるものですから、50代60代の大人奏者だって自分の心がけ次第でこれからいくらでも変わっていくことは出来ますよ。

あなたはこれからどんな奏者になりたいですか?

 

居心地の悪さはチャンスかも

引っ越しを決めたとき、まだ新しい家に住んでない段階で古い家がなんだかしっくりこなくなってきたりしませんか?

もう新しい家を自分の居場所だと感じているので、古い家は今の自分の居場所じゃないような気がしてくるのですよね。

同じことで、ひとつのアンサンブルや吹奏楽、オーケストラなどで演奏していて何となくしっくりこない感じがしてくる瞬間ってあるのではないでしょうか。

その時はもしかしたらあなたがステップアップしていくタイミングだからこそ、現状に違和感を感じ始めたということもあるかもしれません。

人は一生ずっとひとつのコミュニティに留まっているのではなく、段階によって仲間が変わったり所属する場所が変わったりしますから。

コーチングでは今いるところより高いところにいくには現状が居心地が悪いと感じる状況を作る、ということが言われます。

また現状に満足できなくなったり次に向かいたい状況がはっきりしていたりというケースじゃなくても、ちょっとしたお尻の収まりの悪さはもしかしたら新しい場所に向かうきっかけになる体験をしている可能性も。

居心地の悪さを感じたらただ単にイライラするのではなく、何に違和感を感じているのか自分の心と向き合ってみるのも良いかもしれませんね。

なんだかおさまりの悪いソワソワ感をきっかけに、意外なチャンスに気がつけたら良いですね!

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  • この記事を書いた人

有吉 尚子

1982年栃木県日光市(旧今市市)生まれ。小学校吹奏楽部にてクラリネットに出会い、高校卒業後19才までアマチュアとして活動する。20才のときに在学していた東京家政大学を中退し音大受験を決意。2003年洗足学園音楽大学入学。在学中から演奏活動を開始。 オーケストラや吹奏楽のほか、CDレコーディング、イベント演奏、テレビドラマBGM、ゲームのサウンドトラック収録など活動の幅を広げ2009年に洗足学園音楽大学大学院を修了。受講料全額助成を受けロシア国立モスクワ音楽院マスタークラスを修了。  及川音楽事務所第21回新人オーディション合格の他、コンクール・オーディション等受賞歴多数。 NHK「歌謡コンサート」、TBSテレビドラマ「オレンジデイズ」、ゲーム「La Corda d'Oro(金色のコルダ)」ほか出演・収録多数。 これまでに出演は1000件以上、レパートリーは500曲以上にのぼる。 レッスンや講座は【熱意あるアマチュア奏者に専門知識を学ぶ場を提供したい!】というコンセプトで行っており、「楽典は読んだことがない」「ソルフェージュって言葉を初めて聞いた」というアマチュア奏者でもゼロから楽しく学べ、確かな耳と演奏力を身につけられると好評を博している。 これまでに延べ1000名以上が受講。発行する楽器練習法メルマガ読者は累計5000名以上。 現在オーケストラやアンサンブルまたソロで演奏活動のほか、レッスンや執筆、コンクール審査などの活動も行っている。 「ザ・クラリネット」(アルソ出版)、吹奏楽・管打楽器に関するニュース・情報サイト「Wind Band  Press」などに記事を寄稿。 著書『音大に行かなかった大人管楽器奏者のための楽器練習大全』(あーと出版)を2023年8月に発売。Amazon「クラシック音楽理論」カテゴリーにて三週間連続ベストセラー第一位を獲得した他、「音楽」カテゴリー、「クラシック音楽」カテゴリーでもベストセラー第一位を獲得。 BODYCHANCEおよびATI(Alexander Technique International/国際アレクサンダーテクニーク協会)認定アレクサンダーテクニーク教師。 日本ソルフェージュ研究協議会会員。音楽教室N music salon 主宰。聴く耳育成®︎協会代表理事。管楽器プレーヤーのためのソルフェージュ教育専門家。クラリネット奏者。

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