前回は音程やリズムの縦だけでなくバランスを聴く耳も持っておきたいというお話でした。
これは同じ作品の違う奏者の演奏をたくさん聴き比べてみるのがとっても役に立ちますが、もう一つのやりかたとして耳を作るために和声学の学ぶという方法もあります。
有吉尚子です。こんにちは!
音大などである和声学の授業では和音の中の第何音がどう重なってはいけないとか、どの音程が連続して同じ方向に動いちゃダメとか面倒な規則を知っていくものだと思われがちかなという気がします。
でもこの規則というのは、ただの試験のためや嫌がらせで存在するものじゃないんですね。
たくさんの作品の中から響きがクリアに聴こえたり和声の変化が分かりやすかったりというものの共通点をまとめたらそういう仕掛けになっていた、というようなものなんです。
つまり規則を守ると和音がキレイにバランス良く聴こえるんですね。
重複しちゃダメという音は、実際に重複しているとコード的には間違っていなくても和音に濁りが出てくるんです。
連続して動いちゃいけない音程は規則を破って連続的に動くとその声部だけがすごく強調されて浮き出て聴こえるから、全体をバランス良くしたいときには逆効果。
反対にその声部だけ浮き立たせて強調したいときにはわざと連続音程を使ったりします。
そういう風にバランスよく響かせるための音の配置を知って、規則を守ったときの響きとそうじゃないときの響きを実際にピアノで鳴らしたりして違いを知るのは耳を精密に作っていくことになるんですね。
「規則なんてくそくらえ!」という響きばかり聴いているとそういう耳が育たないので和音がぶつかってなくてもガシャッとしたり濁ってることに気付かない鈍感な耳になってしまうんです。
この指揮者の演奏は良い!この先生の感覚は信じられる!
そういうのも時には大切ですが、自分の耳が信用できるようになるというのも良いものですよ!