前回の記事ではドヴォルザークのシンフォニー第九番から第2楽章冒頭のコールアングレのソロを見ていました。
有吉尚子です。こんにちは!
前回音域の低い部分を見たので今回は音が高くなって音量の変化も付いた盛り上がりのところを見てみましょう。
(小節数はソロの開始から12小節間として数えています。)
まず5小節目からの4小節間、これは音域・音量から見ると盛り上がってますが、ハーモニーをざっくり考えると色付けをするオシャレ和音の四度になっています。
固く鋭く激しいようなタイプの盛り上がりではありませんね。
どちらかと言うと柔らかく明るくなるような変化です。
ところどころアングレパート譜記譜ソの音のあたりで五度が顔を出しますが、落ち着き和音に解決はしないふわふわ浮いたみたいな感じのフレーズになっていますね。
帰りたいけど帰れない、というような落ち着かなさがこの4小節の盛り上がり方と言えるでしょうか。
さらに最後の盛り上がり音形で一番高い♭ラ♭シドーの部分は六度なんです。
落ち着きの仲間だけれどあんまり収まりのよくない、何だか座ろうとした椅子を引っ込められたみたいな和音です。
落ち着きのトニックに帰ったー!と思ったらあんまり落ち着かない、まだ帰れないの・・という雰囲気。
次の12小節目も五度や属七などガッツリ盛り上がるドミナントではなくて四度からの主和音なんですね。
盛り上がるとはいえ、やっぱりここでもキツイ硬い音は選びませんね。
どちらかと言うと柔らかくて切ない音色のほうが合うでしょう。
このフレーズは短調でもなく単三和音もほとんど出てこないので悲しみや絶望みたいな感じではありません。
ある程度明るくて柔らかくてそれでいて帰れない場所を想う、まさに郷愁を感じさせるフレーズです。
ドヴォルザークが故郷のボヘミアを遠く離れたアメリカから思う、というエピソードも「新世界より」というタイトルも納得の音楽ですよね。
「家路」なんて歌詞付きの曲にアレンジされるのも自然なことかもしれません。
短いソロのフレーズですが、こんな風に見てみると面白いものですね!
歌い方や運び方はもちろん百人百通りですから色々あるのが自然だと思いますが、フレーズの吹き方に迷ったら参考にしてみてくださいね!