「“あなたはソルフェージュが出来ていません”とレッスンで指摘されるんですが、どうしたらいいのでしょうか。」というご相談をいただきました。
ソルフェージュは生まれつきの才能だから生まれ変わらないとダメ、なんてことはもちろんありません。
このご質問を頂いたときに「もしかしてソルフェージュは教わって身につけるものだということさえ知られていないのでは」と内心びっくりしたのでした。
何となくいつの間にか出来ているという人でも「近くで練習してる人がいたとか親から知らぬ間に教わってた」ということがほとんどです。
歌舞伎一家の血が流れていれば生まれた時からオオカミに育てられても歌舞伎が出来るのかというという話。
冷静に考えてありえないでしょう。
センスは何の苦労もない「血」ではなく、意識的にしろ無意識にしろ努力の積み重ねで作られます。
同じことで西洋音楽だけが遺伝子で生まれつき何か伝わることはないでしょう。
もし万が一、前世からの記憶か遺伝子の奇跡によって生まれつき西洋音楽の【センス】を持った子供がいたとしても、その子が中東やアフリカなど全く違う音楽文化の地域で生まれてしまったら?
それこそ一生苦労するかもしれない悲劇です。
努力して身につけたものを【センス】とか【遺伝】で片付けるのは失礼すぎます。
話を戻しましょう。
この「あなたはソルフェージュが出来ていません」とレッスンで指摘した先生は、ではどうしたらいいかということまでは教えてくれなかったのでしょう。
もしかしたら「そんなの単純に習いに行けばいいに決まってるし相手もわかってるはずだ」と思ったのかもしれませんね。
何がわからないのかがお互いに共有できていると思っていたらそうではなかった、というのはレッスンでのコミュニケーション不足ですね。
で、お返事としては「私のところにレッスンに通うといいですよ」というのはまあそうなんですが、それ以外に普段の練習や日常でも気をつけられることもあります。
その生徒さんの演奏を少し見せて頂いたところ音符は読めてそれを音にすることは問題ないのですが、前の音と次の音のインターバルがどれくらいなのかがきちんと把握できていないようで、(縦のハーモニーではなく)横の旋律のつながりとしての音程が不明確でした。
なのでこのときは「ドからレに行くときとドからミに行くときにどれくらい離れた感じがするか気をつけて吹いてみましょう」という提案をしました。
初めてのときに初見が速かったりたくさんの曲を急いで譜読みしなければならなかったりする人がよくやりがちことに、「この音はこの指」「この音はこのアンブシュア」というように音と奏法を直結させて認識していることがあります。
そうすると音符を見てから頭に出したい音をイメージする工程が抜けてしまうので、音程の前後関係はあやふやになりがちなのです。
楽譜を見て「あ、ドだ。次はレだ。」と思ってるよりは「今のドからこれくらい離れたレの音を出そう」と思うほうが、ピッチ的にも音楽表現としても正確な演奏になります。
そしてそれが「ソルフェージュのできている演奏」に聴こえるの要因の一つ。
こういうひとつひとつの音のつながりを味わいながら演奏する練習はソルフェージュのトレーニングにもなりますよ。
ソルフェージュ力をつけるために何か試したい方は取り入れてみてくださいね!