音楽用語も原語で調べてみるとおもしろいですよというお話をしましたね。
今回は音楽用語と衣服との関係について見てみましょう。
有吉尚子です。こんにちは!
Andante、歩くように。
というテンポ表示がありますね。
この歩くようにというのは、果たしてだれがどこに向かってどのように歩くテンポなのでしょうか。
赤ちゃんがよたよた歩くテンポ?子供が駆け出しそうになりながら歩くテンポ?疲れた大人が家へ向かって歩くテンポ?
実はアンダンテはヨーロッパのロングドレスを着た貴族の女性が食後の暇潰し・腹ごなし(笑)にお庭をお散歩する足取り、だそうです。
演奏会で着る方にはあるあるでしょうがロングドレスはうっかり早足になれば裾を踏んで転びます。
もしそういう衣裳で走りたければ手で裾を持ち上げますよね。
そういう機能的ではない衣服が普段着だった時代のテンポ指定ですね。
現代の日本人が通勤で職場に向かい地下鉄の乗り換えを急ぐための早足は、きっと古典時代の作曲家が意図するアンダンテではありませんよね。
ところで、現在では高級ブランドとして知られるシャネルの創始者、ココ・シャネルが活動したのは1900年ころでした。
今から約100年前のことですね。
彼女は当時女性の普段着だったムダに胴体を締め付けるコルセットや身動きの取りにくいロングドレスは女性の活動を制限するとして、短いスカートやらウエストの楽な現代の洋服の先駆けとなるデザインを提案したのです。
はしたないとか、下品だとか、先進的すぎるとか、色んな批判を浴びつつも、働く女性の先駆けでもあったココ・シャネルはめげませんでした。
そのおかげで現代のわたしたちはラフな服を着られるというわけ。
衣服が機能的に楽になったおかげで動作のスピードが上がった、という一面もあると思います。
それがたった100年前のことだなんて驚きじゃありませんか?
今あるものは当たり前ではなく誰かが切り開いたことなんですよね!
楽器の機能の発展も関係してはいますが、そういった時代の変化のせいで楽譜に書いてある作曲家の意図よりも速いテンポで演奏される曲も多いようです。
もうひとつ、ウインナーワルツとドレスの関係。
ウインナーワルツ(ウイーンのワルツ)は3拍子ですが、2拍目が少しだけ前にずれて長めに演奏されることで知られていますね。
なぜでしょう。
服の話をしているので勘の良い方はすでにわかっちゃったかもしれませんね。
これは、ワルツですから元は踊るための曲です。
ステップの合間にターンをすると、ドレスがフワッと大きくひるがえります。
ドレスが翻りきって、次のステップに移れるまでには時間がかかります。
この間が、やや早めにずらされる2拍目なのです。
美術や彫刻などの文化とは音楽も共通点があるというのは割りと広く認識されてますが、服飾の歴史とも音楽は関係しています。
おもしろいですね!